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20話

……いやいやおかしいよね?クラスアップにロウソクや鞭やら要らないよね?


あれか?吸血姫から女王様にクラスアップでもするってか?


いや吸血姫(そっち)はそもそも種族だし、仮にそうだったとしてもそんなぶっ飛んだ方向の進化は望んでないんだよ。


どうしようかこのまま何事も無かったかのようにばっくれてやろうとも思ったが。


「あのー……何かありましたか?」


案内してくれた職員さんがすげー心配そうにこっち見てるんだもんなぁ……逃げれそうにない。


ここで「クラスアップに鞭やロウソクましてや木馬なんて使わないですよね?」と馬鹿正直に聞ければどれだけ今の気分が楽になるだろうか。


聞こうかな。


聞いてみようかな。


聞いちゃっても良いんじゃないかな。


ふむ、と少し考えてみると。


聞いてみてもしクラスアップに鞭とかを使う場合は仕方ないと入るしかなく、使わない場合にはまず係の人に私の頭の心配をされた上で部屋に入ることになる訳かな?


なるほど、後者の場合には職員さんにまず「は?」と頭の心配をされた後に部屋に入る分何かお得な気がするが。


残念なことに私はその手の高尚な趣味は持ち合わせておらず遠慮したいところである。


やはりここはばっくれるか、と思った私に新たな考えが浮かんだ。


いやまてよ?もしかしたらこの『クラスアップの扉を開けて中に入る』という行動自体が何かを指し示しているのではないだろうか?


扉……そう、扉を開くという実際の行動と精神的な意味での新たな扉を開く事をかけているのかもしれない。


深い、なんて深い考えの下に作られているんだクラスアップのクエストは……やるな『箱庭』の運営!


もう、ロウソクとか鞭とかにビビッていた自分が何か恥ずかしくなってきた。


開けよう、この扉を。そう、いつでも可能性というものは自らの手でもって開くものなのだ。


とかもの凄くどうでもいいことを考えていると扉が中から開けられて。


「早く入ってください。」


「あっはいすみません。」


私は他人の手で開けられた扉を促されるままにくぐるのだった。


まぁ、そんなもんだよね。



――――――――――


さて、入ってから――扉を開けたときに中が見えたのでわかってはいたが――相変わらず真っ暗な部屋に私は立っていた。


私はまたもやあの老人の部屋に訪れたようだ。


そう、あの老人の部屋なのだ。


となると先ほど見えたアレやソレはいったいどちらの――「私のですわ。」


声がした方を向けばまたいつの間にやらテーブルに椅子、それにお茶の準備がされていた。


「鞭や木馬にその他もろもろも、使ってみますか?」


「非常に興味深い話だけれど、全力で遠慮願いたいわ。」


「あら、残念です。」


本当に残念そうな表情を見せるリリィに促され椅子に腰掛ける。


先ほどは新しい扉だの何だの考えてはいたが、私はアブノーマルな世界の扉を開くつもりは特に無いのだ。


「あら、女の子どうしで好きあうのは十分にアブノーマルだと思われますが……ナギハ様の中ではノーマルですの?そこのところ詳しく聞きたいですわ。」


「それは相手がそうするだけで、少なくとも私から手を出したことは一回も無いわよ!」


「一回も、ってことは昨夜以外にもあったのですね。」


綺麗だと大変ですわねぇ、とリリィに何故か同情された。


少なくともその内1回はリリィのせいな気がするのだけどね。



――――――――――



「さてと、そろそろクラスアップについてお話を進めましょうか。」


しばらくお茶を楽しんでいるとリリィがやっとこさ話を進める気になったようだ。


「とは言ったもののナギハ様のクラスはランクアップというものが無いのでレベルキャップの開放だけになりますので……はい終わりましたわ。」


リリィが指をパチンと鳴らした……え、終わり?


確かにステータスを確認すると経験値の表示も正常に戻っている。


後で聞いた話だが、クラスアップをするとレベルキャップが解放されるだけでなく。


ステータスの上昇、クラスボーナスの種類の増加、クラスアップボーナスでボーナスポイントが貰えたりとかなり良いこと尽くめだとか。


「あれ、特殊なクエストとか言うものはしないの?」


私が問うとリリィは首を傾げてたっぷりと何か考えた後。


「私と楽しくお茶をするっていうのも十分に特殊ですわね。」


楽なのはありがたいが、いいのかそんな適当で、と私が訝しげな視線を向けると。


「あらご不満ですの? ならそうですわね……お馬さんと鞭を使って何か特殊な事でも。」


「すみませんでした、お茶が良いです。お茶最高です。」


「そうですか?震える奴や鎖、あとお洋服もありますしちょっと着てみませんか?メイド服とか。」


「いやいや姫でメイドとかどうなのよ設定的に。」


エロゲーじゃあるまいし。


「属性盛りつつ訳あり感が有って良いかと、はい決定です。着ましょうね?着ないとクラスダウンしますよ?」


「なんだよダウンておい!てかトリックスター(これ)の下って何が有るのよ!」


「何でもありますよー?あ、メイドもたしか有りましたしちょうど良いからちょっと下げます?下がったらどの道メイド服か全裸に首輪になりますし私はどちらでも良いんですけれど。」


今なら尻尾もオマケしますよ?

と尻尾の付け根にあたる部分に何やら丸い玉が数珠の様についている犬の尻尾が登場した。


「着る!着ますよメイド服。畜生!尻尾は要らん!残念そうな顔すんな!」


全裸に首輪な時点でヤバイのにあんな尻尾つけられた日には人として何か終わるわ!


――――――――――


その後、着替えると満足したのかメイド服を着て出て行くのを条件に解放された。


部屋から出ると相変わらず時間の流れが違うのか入ってからの時間の経過が殆ど無く部屋の外にはまだ係りの人がまだ居た。


相手から見れば部屋に入ったと思ったらすぐ出て来た変な奴なのにそう言った反応が無いのはつまりクラスアップとはこういうものなのだろう。


「お疲れ様でした……えーとクラスアップされたんですよね?」


「はい、お陰様で……服装には触れないで下さい、別にメイドにクラス変えた訳ではないので。」


じゃあなんで着てるんだよと思われるだろうけど説明するのも面倒くさいから先に聞かない様に言っておくことにした。


だって幼女に脅されて着ています、とかどう説明しろと。



――――――――――



さてクラスアップも無事?終わりカウンターにて登録情報の更新も済ませ、ついでとばかりにインベントリに唸るほど有った討伐部位も換金しておいた。


若干受付の人が引いていた気がするけど気のせいだと思いたい。


ちょっと3桁くらいゴブリンの耳並べただけじゃないか。


ギルドを出ると流石にクラスアップを待つほど暇じゃなかったのかマナ達の姿は無い。


さて、マナに会うという目的は達して更にはクラスアップまでしてるんだからログアウトしてもいいんだけど……。


「あ、そうだクラスアップボーナスでBP増えてるんだっけ更新しとかないと。」


もう少しだけプレイしていくことにするか。

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