15話
全力全壊の勢いで拳骨をアヤとマナの二人に落とした後。
時間が勿体無いのでとっとと行かんかい!
とマナは掲示板、アヤは生産をしに向かわせた私はギルドの喫茶スペースでぐったりしていた。
喫茶スペースはギルド内部の入り口からカウンターに掛けてを一望できる様にされており。
待ち合わせや野良パーティ募集、普通に休憩にも使える。
本来ならばこんな目立つ所に居るのは良く無いが幸いにも先ほどの現場を見ていた方々ばかりなのか遠巻きに見るくらいでそっとしておいてくれていた。
「どうしたの、ぐったりして。またなんかあったの?」
声を掛けられた方に顔を向けるとマサが心配そうに私を見ていた。
「マぁサぁぁぁ。」
「うわっなんだよ!」
私はマサを確認するとすぐに立ち上がり逃がさない様に抱き付いた。
「そうなんだよ、聞いてよマサぁ……。」
「聞く!聞くから!落ち着いて。耳元で喋るな!くすぐったい!」
マサが背中をタップしてきたので私はしぶしぶマサを解放することにする。
私のハグから解放されたマサの顔が赤くなっていた。
そう言えばここはギルドの喫茶スペースな訳で周りに他のプレイヤーがいるのだ。
周囲を見回すと私が視線を向けた先のプレイヤー達が全力で目をそらしていく。
「ごめん。目立ってたね。」
「いや、そっちじゃなくてだな。それにナギハの場合なんもなくても目立つから今さらだし。」
そうじゃないなら何だと言うのか気になるところではあるが今はいいか。
とにかく今はマサに話を聞いてもらおう。
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さて、そのまま喫茶スペースで愚痴を聞いてもらっても良かったのだがマサが嫌がったため宿屋に場所を移すことになった。
基本的に他のプレイヤーから邪魔が入らない場所は宿屋の個室やホームなどしかないのだが、ホームは今戻るとまた囲まれかねない為に使えないので多少お金を払う事になるが宿屋を借りたのだ。
「だからナギハはさ、勝手に触られるのは嫌がるのに自分から抱きついたりするだろう?そんな事だから相手も調子に乗るというか勘違いするという事にいい加減気づきなさい。」
「マジですか。」ふにふに
愚痴を話した後、何故かマサによる私の駄目出しが始まっていた。
「うん、マジで。」
「なるほど、考えたこともなかったよ。」ぎゅー
「だからさぁ……ちょっと離れようか。」
「え?」
「いやいや『え?』じゃなくてさ。今の私の話し聞いてた?」
まったくもってマサが何を言ってるのかわからないわー、ちょっとばかし抱きついてマサの胸に顔を埋めているだけじゃないか。
いやーこれすっごいわ、なんというかものすっごい安心する。
「いや、ごめんごめん。自分でやってみてわかったんだけど、これはなんか仕方ない気がしてきたよ。」
マナの気持ちがなんとなくだけどわかった。これはアカン、人をダメにする。
今までこれを知らなかったと思うと色々と人生損をしていたのではないだろうか。
「いやまぁ、ナギハが復活したなら良いんだけどさ……そんなにいいもんかね。」
そう言いながらマサが私の頭を撫でてくれる。なんだかんだでマサは優しいのだ。
「うん?マサもやってみるかい?」
自分の胸をポンと叩いてマサに尋ねてみるが『気持ちだけ受け取っておくよ。』と言って私の頭を撫でるのを続行するようだった。
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マサの胸を堪能した後すっかり元気になったところでマナはともかくアヤの様子が気になるため、私はマサと分かれて生産ギルドに戻ってきた。
「んー……戻ってきたはいいけどぶっちゃけ何処に行けばいいのやら。」
冒険者ギルドも大きかったけど生産者ギルドも負けず劣らず大きいのだ。
と言うか外から見たときも大きかったけど内部に入るとさらに大きいのはファンタジーで済ませていい話しなんだろうか?
そんな無駄なことで時間を少し使ってからカウンターで聞けばいいことに気づいた私はさっさとカウンターで話を聞くことにした。
カウンターのお姉さんに聞いてみたところ2階に錬金術師用のスペースがあるらしい。
ただ一言に二階といっても無駄に階段があって無駄に部屋があって無駄に人が居るんだけどどこ行けばいいんすかね……。
と思っていると顔に出ていたのか、ありがたいことに職員さんが案内してくれるとの事。
お姉さんが先導してくれるので私は某RPGよろしくお姉さんのフリフリ動く形の良いお尻を追いかけてテコテコついていく。うん実に良い尻である。
「こちらになります。本来であればスペースを使用する場合は使用料を戴くのですが、今回は利用中の方の見学と言うことですのでそのまま入っていただいて構いません。」
「ありがとうございます。」
「あ、それと……流石にあんまりじっくり見られると。その、恥ずかしいです。」
「はい、ごめんなさい。」
ばれてました。
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あの後お姉さんから何故か連絡先と住所のメモを貰い、さらには今日のシフトが終わる時間まで教えてもらった私は既にある意味何かの錬金術を成功させた気がする。
何か一端の錬金術師になった気分で私は生産スペースに入ることにする。
錬金術師用のスペースだということで中に入ると薄暗かったり薬品のにおいがしたり怪しげな錬成陣でも床に書いているのかと思いつつ入るが
そんな事は全く無く、明るくて清潔な空間が広がっていた、これで良いのか錬金術師。
まぁ実際ファンタジーに出てくるような研究施設だとやってられないのだろうけどさ。
仕方ないといえば仕方ないのだろうけど、どこか期待していただけに少し残念な気持ちのまま私はアヤを探すことにする。
生産スペースを見回してみて気づいたのだが利用者が以外と多い。生産プレイヤーもなんだかんだで結構な人数が居るみたいである。
生産プレイヤーが多く居るのは正直安心できるのだが今現在は探すのに邪魔だなって思ってしまうのは勝手だろうか。
アヤを探す途中、何人かと目が合ったので適当に笑顔で会釈を返しておくと皆手を止めて此方を見ているんだけど大丈夫なのだろうか調合作業を放置していて。
なんかヤバイ色の煙やらもの凄く震えている釜が見えたんだけど。
案の定と言うか私が通り過ぎた後で爆発音や悲鳴が聞こえたが聞こえなかったことにした。




