9 雪がとけたら何になるか
2017年4月3日の活動報告を一部加筆修正したものです。
ネットなどで「雪がとけたら何になるか」という質問を見かけたことがあるでしょうか。この質問、よく理系の人は「水」と答え、文系の人は「春」と答えると言いますね。
こんな風に答えが複数考えられるというのは、問題文が悪いのだと思います。というか、「雪がとけたら何になるか」はおそらく学校のテスト問題ではないでしょう。テスト問題としては相応しくありません。
テストの問題としてならば、「雪『は』とけたら何になるか」とすべきだろうと思います。こう問われたなら、「春」と答える人はいなくなるでしょう。
「が」と「は」は違うということです。
「が」は格助詞で、これが付いていわゆる「主語」を示します。一方「は」は提題助詞で、これが提示するのは「主題」です。
「雪『は』とけたら何になるか」
ここでは、提題助詞「は」が付いた「雪」が文の主題となっています。したがって、「とけたら」と「何になるか」の主語はどちらも「雪」です。
「雪『が』とけたら何になるか」
この文、実は「何になるか」の主語が明らかにされていないのです。
というのも、この文は条件を表す副詞節「雪がとけたら」と「何になるか」という述部の二つの部分で構成された複文で、「雪」は「とけたら」の主語ではあるけれども「何になるか」の主語とは限らないわけです。
読点を打ってみると違いがわかりやすいかもしれません。
提題助詞の「は」を使った文では、「雪は、とけたら何になるか」あるいは「雪はとけたら、何になるか」どちらも成り立ちます。
しかし格助詞「が」を使った文では、「雪がとけたら、何になるか」は成り立っても「雪が、とけたら何になるか」では不自然です。
「雪がとける」という条件を提示しているけれども、肝心の「何になるか」の主語は明示していない、というのが、この質問の問題点です。
つまり、「雪がとけたら何になるか」という質問には「何が?」と返すのが妥当なのです!
丁寧に言うなら「何についての変化を問うているのか、明確にしてもらえませんか?」とか。
でも、情操教育的なことだとしたら、敢えてこういう質問にしているのかもしれませんね。答えが一つに限らない質問をして、子供の想像力を養う、ということでしょうか。
「水」でも「春」でもない答えが、たくさんあるのだと思います。
と、色々述べてきましたが、結論としては、「雪がとけたら何になるか」に対する「何が?」は日本語文法の観点からの答えで、実際は場面によって正解が異なるのだと思います。
国語のテストでもそうですが、肝心なのは出題者の意図を読むことです。作者の考えなんて関係ありません。テストでもクイズでも、出題者が設定した答えが正解なのです。理科のテストだったら「水」が正解でしょう。恋人同士の甘い語らいの中での質問だったら「春」かもしれません。
この出題者の意図を読むスキルは、実生活でも絶対に役立つ、というか必要なものなので、学校教育というのはやっぱり大事だなあと思います。このスキルを磨いたら、「わたしと仕事と、どっちが大事なのよ!」という質問にも、きっと正解できるはず。
【参考文献】
益岡隆志、田窪行則(1992)くろしお出版『基礎日本語文法・改訂版』




