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13 「全然+肯定」は全然アリ、というわけではないけれど、問題無い場合もある

 今回は(も?)あまり目新しい話はありません。ただ、つい先日、「全然」の後には否定形が来るはずだから「全然+肯定」はおかしい、と言っている人を見たので、改めて「全然+肯定」は誤りではないということを言っておきたくなりました。



 「全然」の後には否定的な表現が来る、というのは現代日本では一般的な認識だと思います。「全然いい」や「全然大丈夫」のような「全然+肯定」は誤り、あるいは俗語だと言われていました。

 しかし、近年の研究によって、「全然の後に来るのは否定のみ」というのは迷信であると明らかになり、その認識も徐々に広まりつつあるようです。ネットでも記事がたくさん見つかります。内容がきちんと纏まっているものもあるので、詳細はそちらを読んでいただいた方が分かりやすいと思います。NIKKEI STYLE【なぜ広まった?「『全然いい』は誤用」という迷信】や、同じくNIKKEI STYLE【「『全然いい』は誤用」という迷信 辞書が広めた?】が読みやすくておすすめです。



 簡単に状況を説明すると、「全然」は江戸時代に中国語から取り入れられ、明治・大正には「全然」の後に肯定形と否定形どちらも使われていました。ところが、戦後の昭和20年代後半頃から、「全然」の後には否定形だけが使われるという迷信が『何故か』広まったようなのです。『迷信』とされているのは、根拠が無いからでしょう。だって、昔は漱石だって日本語の研究者だって「全然+肯定」を使っていたんですよ。

 そして、『何故か』という通り、「全然」の後には否定形だけが使われるという規範意識が具体的にいつどうやって生まれ、広まっていったのか、未だ解明されていないのです。とても興味がそそられますよね。



 「全然」は中国語由来ということで、中国語における「全然」がどのように使われているかにも触れておきましょう。《百度汉语》では“全然”の意味を“1.完全,都。2.完备,完美。”としています。副詞としての意味は1の方で、意味も日本語とほぼ同じです。用例には戦国時代の《庄子·应帝王》が挙げられるなど、かなり古くから使われている語のようです。そして、《百度汉语》にはこんな記述もあります。“完全地(多用于否定式)”カッコ内に、多くは否定形で使われる、と書いてあるのです。

 また、NIKKEI STYLE【「『全然いい』は誤用」という迷信 辞書が広めた?】でも『「応用漢語詞典」(商務印書館、2000年)の「全然」の項には「只能用于否定…不能用肯定」と肯定での用法を誤りとする注意書きがあり、中国にも日本に似た現象が起きていることが分かります。』と書かれています。

 個人的に、これが日本語からの影響だったりしたら面白いと思うのですが、どうでしょうね。



 話を日本語に戻します。「全然+肯定」は「誤用」ではないと述べましたが、正確に言うと「全然大丈夫」は問題無いけれども、「全然美味しい」はちょっと怪しいのです。元々「全然」が肯定形と共に使われていたのは、「全然」を「完全に」「すっかり」等の意味で使う場合でした。「全然美味しい」の「全然」を「断然」「非常に」と程度を強調する意味で使う場合はやはり俗語のように捉えられることが多いようです。

 ただ、「全然」が「完全に」なのか「非常に」なのか、見極めるのが難しい場合もあるので、ややこしいですね。



 そしてまた、「日本語の正しさ」とは何なのか考えさせられます。私はずっと「全然」の後は否定形が来ると信じていました。「全然いい」は間違った日本語だと考える人は、今も多いでしょう。私達は皆、『迷信』を信じ込まされてきたのです。それで「あなたの使う『全然いい』は間違いですよ」なんて指摘したりする。「正しい日本語」って何でしょう。



 現状ではまだ「全然+肯定」は「誤用」あるいは俗語だと見做されることが多いです。そんな状況ですから、ビジネス文書等、フォーマルな場面で「全然+肯定」を使うのは控えた方が良いと思います。たとえ日本語の歴史から見て正当な使い方だとしても。



 言葉は変化するものだからと言うのなら、「全然」の後は否定のみだという主張も受け入れるべきなのかもしれません。難しいところですが、判断は個々人に任せるとして、「全然+肯定」は本来「誤用」ではなく、「全然」の後には否定形のみが来るというのは迷信だという事実を、もっと広く知ってほしいと思います。その事実を知った上で、やっぱり「全然+肯定」は変だと思うならそれでいいのです。正直に言うと、私も「全然いい」は俗語っぽいと感じています。



 とにかく、『「全然+肯定」は全然アリ、というわけではないけれど、問題無い場合もある』という事実を拡散希望なのです。

【参考文献】

長崎靖子(2017)『川村学園女子大学研究紀要』「文学教材における語彙の指導に関して—教材「羅生門」を例として— 」

 https://kgwu.repo.nii.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=37&item_no=1&page_id=13&block_id=21


新野直哉(2013)『国語研プロジェクトレビュー 』「国語学者浅野信の言語規範意識—昭和10年の「全然このお菓子好きだわ」について─」

 https://repository.ninjal.ac.jp/?action=pages_view_main&active_action=repository_view_main_item_detail&item_id=751&item_no=1&page_id=13&block_id=21


NIKKEI STYLE(2011)『なぜ広まった?「『全然いい』は誤用」という迷信』

 https://style.nikkei.com/article/DGXBZO37057770W1A201C1000000/?page=2


NIKKEI STYLE(2012)『「『全然いい』は誤用」という迷信 辞書が広めた?』

 https://style.nikkei.com/article/DGXBZO42854280R20C12A6000000?channel=DF210220171901&style=1&page=2


百度汉语 “全然”

 https://hanyu.baidu.com/zici/s?wd=%E5%85%A8%E7%84%B6&query=%E5%85%A8%E7%84%B6&srcid=28232&from=kg0&from=kg0


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