勝負する
僕を圧倒する球をどんどん打ちながら、坂藤くんは言った。
「誰もが努力して周りからも認められながら実力を伸ばしていけるわけじゃない。そんな人はかなり少ないのかもな。まああいにく俺たちの身近にはいたかもだけど」
これは友輔のことだろうなとおもう。
確かに、友輔は、レアケースなほどな順風満帆さだ。
テニスは彼女と揃って全国大会を達成。イケメンで彼女も可愛い。
成績も良くて、学校でもかなりちやほやされてると思う。
坂藤くんはそんなふうに実力を伸ばす人ばかりではないと言っている。
そう、だからこそ……
「ちなみにもうこれは本当だけど、俺は関東大会までは行ったんだ。こうやって人を騙したりしてだけど、行けたんだぞ、かつてテニスで全く大会で勝てなさそうだった俺が代わりに始めた卓球で」
坂藤くんの言うことも確かにと思うしかない。
世の中そういうことがたくさんあるしそれで前に進んでる人がほとんどだ。
テレビでやってるプロスポーツの超いい部分のような勝負などほぼないよな。
例えば定期テストの過去問をこっそり先輩からもらって友達には教えずに、周りよりもいい点を取りたい人。結果的に推薦入試とかで有利になるだろうな。
他にもどの勝負で見ても、そういうことがあるだろう。
その中で僕はどう頑張るのか、考えなきゃ。
そして、こんな地区大会一回戦突破のために、僕はなぜここまで努力をして、今も勝負をしているのか。
「結構差が出てきたな、よし」
坂藤くんがサーブを打つために構えようとした。
けど一旦タイムアウト。
応援はいないけど、一人で休憩しに行く。
僕は羽菜のところへ。
「大丈夫。私はね、拓人が勝てると思ってる。なんでかの理由はない。でも、とにかく絶対勝ちだから、そういうことに、私が絶対してやるから、たくとは勝ってきて」
「……おっけ」
羽菜が勝ち認定を前もって渡すから、僕は本物の勝ちを手に入れてこいということ。よくわからない話だなと見せかけて、僕にはとてもわかった。
なぜなら……僕はどう頑張るかにつながるから。
順風満帆に当てはまらない僕はひねくれなくてはならない。
ならどうひねくれるかだ。
その僕なりのアイデアを卓球にして、坂藤くんと勝負してみせる。
そしてのその勝負のストーリーを受け取るのは、この試合を見ている、羽菜だ。




