まだ強くなる
坂藤くんとの試合はまた始まった。
そして、僕が有利な試合の進み方だった。
やはり攻める球を決めたのがよかったみたいだ。
本当に羽菜のアドバイスが最高すぎたということだ。
野球で言ったら、ストレート狙いで打つみたいな作戦だけど、卓球でもなんとかうまく行っている。
とはいえスコアは6対3で、勝ってはいるけど全く圧倒的ではない。
「なんか、ちゃんと球を打てはするんだな。まあそろそろ第三グループのみにしようかな。打つ球を」
「え」
「少なくとも、君が待っている球は、もう打たないよ」
「……」
「作戦が単純だからすぐわかる俺には。それに、その作戦だって自分で考えたわけではないんだろうな。あの女の子から教えてもらったんだよな。まあ色々と受け身ばかりなんだろうね周りからの。卓球始めたのだってあの女の子がきっかけと見た。とにかくそんな感じだと、なんかまあ卓球も、それこそラケットの厚さほどもこだわりがなさそうだね」
「……」
余裕がなくなってるから色々言ってくるんだろうけど、でも少しいやだったので、僕からも別の話をふって見た。まあちょっと気になってたことがあったので。
「ところでさ、僕の友達に、坂藤友輔ってやつがいるんだけど」
「……」
「知ってる?」
「……双子の兄だね。二卵性双生児だからあんまり似てないけどな」
坂藤くんはそう言って、少しおとなしくなった。
なんか効果はあったらしい。話を変えようとしたのが予想以上に簡単に成功してしまった。
まあ友輔が双子という話は聞いていたし、坂藤という苗字も多いというほどではないだろうし、友輔に坂藤くんは少しは似ていたので、そこまで意外ではない。
よし、試合に戻ろう。
坂藤くんは確かに球の質を変えていた。
でも、羽菜とのラリーの回数をなめないでほしいな。
また僕が慣れやすそうな球を見つけたぞ。
僕は思い切ってかなり振り切る。
いいコースだと思ったけどアウト。
でも次は入れてくぞ。
坂藤くんは少し、純粋な気合いでもって試合に臨み始めていた。
嫌味を言われるという時間は終わりかもしれない。
だけど僕は安心できないと思う。
多分、ここからの方が、強くなるんじゃないかな、坂藤くん。




