三ゲーム目へ
そしてそれからは、ほぼ、僕のサーブは坂藤くんに対応されてしまった。
しかし、僕もなんとか来る球を返しまくって、互角を維持した。
坂藤くんは二ゲーム目になって、いろんな打ち方を新たに出してきた。
「ほら、相手に慣れられないようにゲームが進むまで打たないタイプのショットがあるじゃん。それをそろそろ出して行こうかなと思って」
「なるほど、そうか」
てことはまだまだ隠してるのがあるのかな。
自然と試合終盤の方が有利になるやつだ。
僕は試したいサーブとかが少しはあるにしろ、特にとっておきの技とかは、何もない。
なおさら第一ゲームは取っておいてよかった。
そして実際、それから二ゲーム目が進むと、僕が返すのに失敗することが多い球が増えてしまった。
これは問題だし、もう坂藤くんにはゲームポイントを握られている。
そして……まさかの坂藤くんのサーブを空振りして二ゲーム目が終わってしまった。
今のサーブも、初めて受けるサーブだった。
自分で言ってた通り、経験をしてるのはそうなんだろうな。坂藤くん。
確かに僕はまだまだだ。
だけどここであー、無理そう、となるのはダメだ。
まだゲームカウントは1対1だし、とにかく僕は落ち着いて、いろんな回転にも対応する返し方をしていかないと。
羽菜のところに僕は行った。
「どんまい。大丈夫。とにかく打ちやすいタイプの球を見つけて。それが来たら攻めるモードになるのがいいと思うよ」
「そうだな。ありがと」
僕は水分補給をしながら思い出した。
何かあっただろうか、まだ打ちやすい球。
確かにあるかも。
一つ、結構な頻度でサーブや低い弾道の球のリターンとして返ってくる坂藤くんの球は、羽菜のに似ていた。
あれなら慣れ次第、対応できるかも。
もちろん他の回転の球とかも、どんどんと増やしてくるんだろうけど、でも、少しはまた羽菜のに似てる球も打ってくるはずだ。
他にもちょっと戸惑ってて気づかなかっただけで、羽菜の球に似てるのがあるかもしれない。
そしたらそれに慣れるのは早いと思う。
だって羽菜と打ってきたのはもう数え切れないくらいの球数だし。
よし、方針が決まったら三ゲーム目は強気になれそうだ。
タオルで汗を拭いてから、ラケットのラバーの端を指で触って、僕は台の方へと歩いた。




