二ゲーム目が始まる
坂藤くんはしばらく僕のサーブをうまく返せなくて、だからそのおかげで僕の方が有利になった。
そして坂藤くんは、また僕になんか色々言うのかと思いきや、あまり何も言わなくなった。
一ゲーム目のゲームポイントは僕になって、つまりはこのポイントを取れば、僕が、最初のゲームを取れる。
サーブは坂藤くん。
打ってきた球を、バウンドしないうちに前にすばやく強く返す。回転は前。
壁打ちで鍛えたショーバンに、羽菜とたくさん練習して強くなった前回転を取り入れた、攻めの球だ。
軌道は途中で落ちるようになり、そのおかげで、より難しいコースも入れられるようになった。
そしてそれが決まった。
一ゲーム目取れたぞ!
やった。
「拓人ナイスすぎる、いいね!」
羽菜が手を振るので、そっちに向かって、休憩しに行った。
「なんか相手にぶつぶつ言われてたけど大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。気にしない」
「うん、それが一番。で、でも私の応援は聴いててね!」
「もちろん」
それが、一番欲しい声だし。
水分補給と休憩を適度に、だらけそうにならないくらいして、僕は第二ゲームをしに向かった。
坂藤くんは僕を見て……
「どうして君はテニスやめたの?」
そう訊いてきた。
「まあ……卓球がしたくなったからだな」
テニスがあまりにうまくならなかったからとかもありそうだけど、僕はちゃんとそう答えたかったし、それをすぐに言葉にできてよかった。
「そうか、ちなみに俺もテニスやめたんだけどな」
「そうなのか」
「そうだ。そうだから、まあなんとなくわかるけど、君はテニスのセンスはほぼ無しで、卓球のセンスもそこまでないね」
「そうかもな」
まあ二ゲーム目を始めよう。
二ゲーム目は僕からのサーブなので、坂藤くんに未だ効果のある、テニスやってた感のあるサーブを打つ。
しかし坂藤くんの返しは……それ、テニス打ちか⁈
テニスのストローク、つまりテニスで普通に打つ時の振り方で打ってきた。しかし似てるのは振り方だけでちゃんと改造されている。
しかしラケットの面の角度が完璧すぎるのか、卓球の振りのような球がくる、いや、弾む力強さは卓球にはないタイプかもしれない。
僕は返せなかった。すごく大きなアウトだった。
「こっちも、テニスやめてから卓球頑張ってきたからな、色々な打ち方は持ってる。それに経験もしてるからね。卓球で全国まであと一勝まで行ったから」
坂藤くんは、今までの台詞よりあまり嫌味ったらしくなく、そう言った。




