ラリーとボール拾いと胸
「痛い、いたた」
「結局痛くなっちゃったのね」
「厨二病の人に言うみたいに呆れた目しないで」
「はいはい。ていうか、ちょっとマッサージでもしてあげようか? ほ、ほんとは腕なんか触りたくないけどね、なんか汗ばんでそうだし」
「うん、実際汗ばんでるしいいよ」
「あっ……そう」
「え。なんかマッサージやりたかったみたいなトーンなんすけど」
「は? 気のせいすぎでしょ。なに、女子の私にマッサージして欲しいの?」
「だからしなくていいって言ったよなさっき、よし打つぞ。痛くても動きはするんだよ」
「はいはい。じゃあまずお互いフォアね」
こうしてちょっと色々と言い合ってからラリーを始める羽菜と僕。
まだ僕は打球のコントロールがあまりできなくて、よく羽菜のバック側に行くんだけど、ちゃんと回り込んでフォアで打ち返してくれる。
なんていうか結構動きも鍛えられてて、かっこいいな、羽菜。
中学の時大会で一回戦突破したこともあるらしい。
まあそれくらいあるよねって言えばそうなのかもしれないが、ちゃんと勝ったんだよ試合に。
そんな経験ないからすごいなあ、と思う。
「はい、じゃあ一回ボール拾おっか」
「はい」
羽菜と二人でボール拾いをする。
とてもいいなあ、誰かとボール拾い。
孤独の炎天下VS涼しめの室内で羽菜と。
今の圧勝。
さて、まだ落ちてるボールを……
「あ、ごめんごめん!」
「今、胸に手当たりそうだったね」
「たまたまそっちに手が伸びただけだからほんと!」
「いやわかってるって。しかもかすってしかないし」
考え事しながらてきとうに手を伸ばしてボールを拾う癖がついてて、周りに触ってはいけない場所があるってのに慣れてない。
そこんところは注意しないとダメだな。
新たなことを学んだとともに、一旦意識しちゃうと、羽菜の胸が……。ウエアだと結構膨らんでるんだもん。
「全部集まったね」
「う、うんそうだなとてもよかった!」
「そうだね……って拓人、なんか変なテンション始まってない? あ、ボール拾いやると、もう本能的にアドレナリンが分泌されるみたいな?」
「それっすね」
「ふーん、面白い性質を身につけちゃったねえ」
そう言って、「次お互いバックね」と、台の反対側に行く。
でもその時、ちょっだけ笑っていて、そして、胸元のウエアのしわをいじったりしていた。
胸意識してたの、バレてる気がするな……。ごめんなさい。




