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強い羽菜

 だけどそんなに理想的な流れになるってことはない。


 まずポイントを順調に取り始めたのは、羽菜の相手だった。


 相手はカットマンではないが、どちらかといえばつなぐタイプ。


 だけど唐突に攻撃を始め、でもまたやめて、みたいな感じで、なんか曲だったら、転調しまくりみたいなプレースタイルだ。


 そんな変化する相手に羽菜も合わせるしかなくなってる感じで、相手がつなぐときに攻めてミスったり、相手が攻めるときに弱気になって甘いボールを返してしまったりしていた。


 でも。


 羽菜はやっぱり強いと思ったのは、それでもちゃんと相手にある程度ミスらせていて、だからポイントはそんなに差がない。


 羽菜が何か相手の弱点とか作戦とかを思いつければ、すぐに逆転できる。


 だから何か見つけて欲しいし、僕も見つけたい。


 だけどそんなに簡単に見つからないよなあ。


 でも、羽菜はそんな中、段々と攻撃的なショットを増やしていた。

 

 そしてそれが何回か決まると、相手が弱気になってきた。


 なるほど、これで、相手が唐突に攻撃型になるのを防げるかも。


 とにかく相手に印象づけるようなすごいショットでポイントを取りに行くことで、余裕があるように見せられる。


 よし、僕は何も羽菜に役立ってないけど、羽菜がいい調子になってきた。


 僕は声だしで貢献するのみだね。


 相変わらず卓球の応援をよくわかっていないのでテニスのノリで応援する。まあ大体一緒な気がしできてるけど。


 そして一ゲーム目はデュースになって、そしてさらにまだ互いにポイントを取り合っている。


 羽菜が負けていたところから追いついたのだ。


 追いついた方が気分的に、そして実力的にもいい球が打てる状態にある可能性が高い。


 よし、羽菜、連続ポイントいくしないぞ。


 僕は羽菜の応援に力を入れて、声にも力を入れた。


 羽菜の応援をしてるのは僕なんだって、羽菜にも僕にも届けるように。


 そして、少し落ちついた応援に戻しつつ、羽菜の試合を見ていると、もう羽菜が一ゲームとっていて、二ゲーム目も羽菜の方が圧倒的にポイントをとっていた。


 試合は加速し始めていて、羽菜がゲーム間に休憩しにきたのもよく覚えてないくらいだったのだ。


 相手の応援も力が入ってるけど、でも羽菜は惑わされず調子がいいし、慌てもしないし、ミスは少ない。


 羽菜の実力が高くなってることに、試合本番でひたすら気づきまくったのだった。


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