まずは羽菜の試合
前回の試合と同じように、バスの中で羽菜と会う。
「おはようー。夜更かしはしてない?」
「もちろんしてないよ」
羽菜に訊かれ、僕はすぐに答える。
「じゃあ、もうあとは卓球をするってだけだね」
「そうだな。あんまり色々考えすぎてもプレースタイルが変になるだけだから、卓球するだけってノリでいいかもな」
「そうそう」
夏休みの真ん中より少し後の、とても暑い朝。
会場の体育館は立派で、熱がこもることはないと思うから、まあ関係ないけど、でも、夏の大会に向かっているという気分には、朝からなれる。
バスが体育館のすぐ近くにとまった。
僕と羽菜以外にも、卓球をしに来た人々が何人か降りた。
体育館には早めに着くようにしたけど、羽菜と僕以外にも早めに来る人が結構多いようだ。
前の試合の時と同じ感じでエントリーを済ませて、あとは一回戦の行われるコート番号を確認。
ちなみにスケジュールも大体前回と同じで、羽菜の試合があった後、僕の試合がある。
まずは羽菜の応援だな。
まあ……まだ試合開始までも時間があるから、やっぱりまずは身体をほぐしたりする時間かな。
試合が近い羽菜だけでなく、僕も軽く身体を動かしたり伸ばしたりする。
もともと動けるようにしておいた方が、試合前の準備運動で慌てなくてすみそうだし。
そして羽菜としゃべることがない。
試合以外の話をのんびりする気分ではなくて、雰囲気もそんなんではない。
だけど試合の話ばかりしてても、それこそ準備運動の効果が半減するくらい、緊張の要因となってしまいそうだ。
だからお互いしゃべってないのだ。
そんな静かな僕たちの周りは、そこまで静かではない。
特にうるさい人はいないけど、人が多いし、同じ学校で集まってる人たちが結構いるから。
「そろそろコート行こうかな」
「おっけ」
そして、羽菜の試合があるコートへと向かう。
対戦相手はもういた。見た目で強そうかはわからない。応援は二人しかいなくて、大きな部活ではなさそうだ。
また始まる。試合が。
始めから最後まで羽菜の理想の流れで、無難に勝って欲しい。
だってもう羽菜は一回戦突破は絶対するつもりでいると思うから。




