ラケットを買って筋トレしたら、ちょっと緊張した
スポーツショップで。
「ひえええ」
「いつまでびっくりしてんの」
「いや、色々とこだわるポイントがあるんだなあって」
ラケットのラバーとかの種類が多すぎてびびっていたのだ。
まあもう羽菜にお任せにして初心者向けのを貼ってもらったけどね。
たしかにテニスもガットが無限にある。
ただし僕レベルだと対してこだわりはなく、切れにくいポリ素材のものをつけて、張り替える頻度も少なめだ。
まあ……壁打ちだけだしな。
とにかくこれで僕のラケットも手に入った。
シューズはまあ体育館用のシューズでいいでしょってことになったので、あとはラケットケースを買っておしまい。
「今日は中途半端に時間が残っちゃったわね。上のトレーニングルームで筋トレしていく?」
「き、筋トレ?」
「ここで三千円以上買い物したら一時間は無料で使えるよ」
「あ、そうなんだ」
「拓人、まさか筋トレしない人?」
「いや、筋トレしない人というよりはボール拾いがトレーニングな人だよ。いやだってさ、ボール拾いした後壁打ちしたらもう疲れて筋トレするのは無理じゃん」
「それもそうね……かわいそうだったのね」
「哀れまれてる」
「ま、とにかく今日は筋トレしましょう。といってもそんなハードにはやらないわよ。筋肉痛になって明日動けなくなったら困るし」
「はいよ」
羽菜と僕は上の階へと上がった。
☆ ○ ☆
う……あ、やべ。キツくて息吸うのもできんぞ。
「拓人……けっこうなへなちょこっぷりね」
「まあな、腕もう死んでるし足はもう漕げない」
すごい負荷のかかるタイプのエアロバイクじゃんかこれ。
ランニングよりきついぞ。
腕は、さっき重いもの上げ下げしてたら、腰をうまく使わなかったせいか感覚が変。
「なんか、女子の平均の私よりも色々と情けなくない?」
「そうだけど? ちなみにテニスだと、蓮花をはじめとして女子のレギュラー陣には累計一勝二十三敗だけど」
「あ、でも一勝したことあるんだ」
「男子女子合同部内大会だったんだけど、女子はみんなでスイーツバイキングに行って棄権して不戦勝したな」
「そ、それ勝ったカウントしてんの? ぷぷ、情けな」
「情けねーよ。認めるからもう終わりなトレーニングは」
「はいはい。まあ見てる限り、スタミナは少しましだけどね」
「ボール拾いで鍛えられるのってたしかにそれだけ説あるな……でもボールのカゴも重いけどな……」
そう言うと、またかわいそうって言おうとしてる羽菜がこっちを見てるし。
くそ。情けないところしか見せられん。
「まあ、ちゃんとやるうちに筋肉もつくでしょ……あれ、あ、でも意外とある?」
「え?」
上腕を握ってきたんだけど。羽菜。
「ごめん、すごい触っちゃった」
ぱっと卓球部らしい瞬発力で、手を引っ込めた。
でもまだお互い近くて、羽菜も僕も汗をかいていて……。
あ、そして、運動後の可愛い羽菜が触ってくれたことによる圧倒的回復。
腕の感覚がもう変じゃない。
これは明日もちゃんと卓球できそうだ。
……後から筋肉痛が来なければ、ね。




