長い買い物
「……いやいくらその時動くボールカゴ作りたいと思ってもさ。実際買う人はなかなかいないよね」
「はい」
何これは。無駄なもの買って怒られる息子?
「拓人って絶対お年玉すぐ使っちゃうでしょ」
「そうかもな」
「うんうん。でね、その五千円のラジコン、当然部の予算からは出ないからね」
「え、なんでー! だってこれ動くボールカゴのために買ったんだよ」
「いやそんなの払う余裕ないし。二人の実績乏しい部活なんだよ?」
「はいそうでしたね……」
まあいいよ。普通のラジコンとしても遊べるから楽しそうだし。
僕は自分の遊び用にも使う決意を固めながら、洋服売り場へと差し掛かった施設内の道を歩いていた。
「おおー。これだけ多いと、前もって決めた候補とか関係なくなるね」
羽菜が感心して売り場を眺めてる。
「てことは長引きますかね?」
「ごめんねー。ラジコンで遊んで待ってていいよ」
「それ完全に子供とお買い物に来たお母さん……」
「確かに。じゃあ拓人は子どもね私のねうん。はい、迷子にならないようにねー」
「ならんよ」
とはいえ広い。方向音痴でもないし地図も読めるので迷子にはならないけど、どこに何があるのかはなかなかわかりづらいな。
でもなんかいい洋服のオーラでもするのか、羽菜について行ったらレディースの服の売り場のど真ん中にいた。
気づいたら樹液のど真ん中にいるカブトムシみたいだ。
まあ例のごとく名前もわからないけどオシャレそうな変わった服から僕でも着ることはできそうな服まで色々とある。
まあ僕はのんびり巡回してますかね。羽菜にずっとくっついてるのも落ちつかないだろうしね。
で巡回してて、僕自身がラジコンになりそうな頃、羽菜の買い物が終わった。
「お待たせー」
「めっちゃ買ったな。今言わせてもらうけど、羽菜も、お年玉すぐ使うでしょ」
「うん!」
「だろうねー」
「まあ私、おばあちゃんがたくさんお小遣いとかお年玉くれる環境だからねー」
「それが洋服たくさん買えてる源か」
「そうだねー。って言ってもそんな高くないよ合計しても。ここ全部安い」
「そうか。なら来てよかったね」
「うん」
満足そうな羽菜が可愛いおかげで、ラジコンになりかけた僕の呪縛は解けた。




