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熱帯魚

 家に帰ってスマホを見たら、羽菜からメッセージが通知で出ていた。


 写真付きだった。


『熱帯魚買いました! 今日から飼います! だいたい外観はこんな感じで……』


 水槽のセッティングとか、店員さんからも助言をもらえたみたいで、僕と一緒に計画を立てた通りの水槽が再現できていた。


 ネオンテトラが一番たくさんいる。


 綺麗。


 だから


「綺麗だな」


 と返したら、返事がそっけないのがバレてしまった。


『拓人元気ないでしょ。電話するからもしよかったら話して』


 そしてかかってくる電話。


 僕は電話に出た。


『もしもしー』


「もしもしー」


『なんかあった?』


「あ、いやまあ、ちょっと勉強面でね……」


『あー、勉強のことかあ。確かに私も勉強疎かだもんなあ。拓人ももう確かに受験勉強もあるのか……。大変じゃん。でも……勉強だけよりは卓球もやったほうが楽しいし』


「そうだよな。うん。僕羽菜と卓球してたいし、まだまだね」


『ありがと……うれしいよ、拓人、がんばろうね』


「だな」


『声がちょっと明るめになってきて、よかった』


「ほんと?」


『うんほんとに私にはそう聞こえるよ。ちゃんと拓人のいろんな声聴いてるもん』


「そっか。じゃあ、羽菜と話したからだ。ありがとう」


『ううん、あ、せっかく繋いだからさ、ビデオ電話にしていい? 水槽見せたい』


「お、見せてくれるの?」


『めっちゃ見せたいんだよー』


 羽菜の顔が現れた。


 そして羽菜の顔はいなくなり、水槽が映る。


 おー。画面を通して水槽を見ると、動画サイトで水槽見てるみたいだ。


 しかもちゃんと魚も水草もあぶくもはっきりと映ってる。


 スマホのカメラ綺麗だなあ。


 羽菜との合宿の写真もスマホで綺麗に撮れたし。あれはすでに三回くらい見返したりしてる。羽菜、可愛いなってなるよね。


『どう? いい水槽?』


「うん。すごいいいな。みんな住みやすそう」


『よかった〜。まだちょっとお魚さんたちは慣れてなくてうろちょろしてる感あるけどねー』


「あー、まあ少し経てば、隠れ家とかも使うようになるよ」


『隠れ家使って欲しいねー、この木の穴みたいなやつ』


「うんうん」


 そんなふうに話しながら夜を過ごすと、やっぱり、心が落ち着くもんだ。


 イライラなんて、しなくなる。


 だからやっぱり、羽菜との時間、そして羽菜と卓球をする時間は、減らしたくないと思うのだった。


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