合宿終わり
さらにそれからいくつかのアトラクションを楽しんだら、もうあたりは、電灯のおかげだけで明るい状態になっていた。
午後から来たんだもんな。すぐ夕方になるのもしょうがない。
「もう帰らないとねー」
「そうだな」
「また、遊ぼう」
「遊ぼう。うん」
僕はうなずいた。
場所は別にこんな遠くでなくてもいいし。
多くの人は出口方向に歩いている。
僕と羽菜も、人のゆっくりした流れと同じように動く。
「帰りの電車では寝ようねー」
「それ」
「二人で寝過ごしたらどうするの?」
「一番寝過ごしても新宿までだから帰れるでしょ」
「そっか」
ジャングルの世界観の出口を通り、そのまま今度は改札の入り口から入る。
一気に現実の電車が目に入った。
「ちょうど電車来ててよかったねー」
「確かに次だと三十分は待たなきゃいけなそうだもんな」
電車は空いてはいなかったけど座れはした。
都心だとめっちゃ空いてるに入る部類かもしれないけど、今の印象は、楽しみ終わってのんびりしている人たちで賑わっているというものだった。
すでに話していた通り僕も羽菜も寝た。
ちょっと喋りながら段々と寝た。
まるで、一緒に並んで夜眠りにつくみたいな感覚。
かなりゆったり寝れた。電車の座席は狭いのに。
しかも運のいいことに新宿じゃなくてちゃんと降りたい駅で降りれた。
「ま、私が目覚めたからよかったねー」
「いや僕も起きてたよ」
「ほんとー?」
「ほんとだよ」
羽菜と僕は、地元の星が少なくなった空を眺めた。
少ないとはいえやっぱりちゃんと夜空だ。
久々に帰ってきた。
よし、夏休み初めからすごく卓球して遊べたから、これからもこの調子でいこう。
僕はそう思った。
「拓人」
「どうした? 羽菜」
「私ね…………拓人……と色々できて、楽しかった」
「僕も楽しかった」
「ありがとう」
「うん、ありがとう」
僕は羽菜を見た。
夜空の雰囲気は変わったけど、羽菜の雰囲気は変わってなかった。
僕もきっと変わってない。
変わるとしたら、ほんの少しずつ、二人一緒に変われたらいいなと思う。
羽菜のアパートの壁の前まで来た。
「久しぶりー」
「壁に挨拶しない」
「はい……じゃあね。お疲れ様。羽菜」
「うん、お疲れ様、ばいばい拓人」
羽菜がアパートの階段を登る。
そして僕は、我が家への道を、アパートの壁に沿って歩き出した。




