お昼に幼馴染に話しかけられた
次の日のお昼頃。
学校の図書室で借りた卓球の本で卓球の勉強をしていると、蓮花が話しかけてきた。
「昨日はボール拾いめんどかったよー。あ、今日は頼んだよっ、拓人」
「いや……悪いけど、僕は……卓球部に入ることにしました。ででん」
卓球の本の表紙を突き出す僕。
堂々と言う方がいいと判断した結果の行動である。
「え? えええ? なんで? ボール拾い大変になっちゃう」
「それはごめん」
「……えー。本当にやめちゃうの?」
「うん」
僕が真剣に言っているとわかった蓮花は、可愛いまま低い声になった。
「あっそ。ボール拾いは、じゃあもうあんたはやってくれないわけね」
「ごめん」
まあでも、僕がボール拾いをするなんて義務は元々なかったんだ。
「わかった。めんどくさいけど、自分で拾うわ。球打つ時間減っちゃうかもなー」
蓮花はそう言いながら少しずつ離れていった。
たしかに……。蓮花のテニスの上達のためを思うならボール拾いをしたほうがいいかもしれないけど。
でも僕だって、普通に部活をする権利はあるし、他の部活に入ったっていいだろう。
ボール拾いを急かされながらやるのが僕の放課後ではない。
息をはいてから、また僕は卓球の本を読む。
ほおほお、構え方とかから、本当に参考になるな。
けど、やっぱり、羽菜に教えてほしいかも。直接。
やっぱり卓球をちゃんとできるのが楽しいのもそうだけど、羽菜との時間ってのが楽しいっていうのも相当あるな。
僕は一人で本にうなずいた。
だって、やっぱり可愛くて、テニスを一緒に昔はしていた女の子だ。
テニススクールにいた時は、間違いなく意識していた。
今は……どうなんだろう。
わかんないかな、まだ。
でも、放課後が楽しみになったのは、明らかだ。
当たり前か。ボール拾いだけだったもんな。
ふとスマホを見ると、羽菜から連絡が。
『放課後、校門のところに来て。そのままラケットとか買い行くよ』
仲間との部活動に憧れてた羽菜が、「2021年度卓球部」なんてメッセージグループを作ってるけど、実質羽菜と僕の個チャ。
グループのアイコンまでしっかりピンポン球とラケットの画像になっていて、微笑ましい。
僕は、そんな羽菜しか相手がいないグループに、
『おっけーです』
と送信した。




