入場
お土産を買い終わってホームに上ったら、すぐに電車が来たので乗った。山の間を走り出す。
「うおー。近くなってきてるねー」
段々と大きくなる観覧車やその他建物を見て、羽菜が言った。
確かに。ずっと目的地が見える状態で近づいてくるって、いいね。
電車はまだお昼の田舎の路線なのに、そこそこ人がいる。
僕たちと同じ目的地の人が多そうだ。
そのままどんどんと近づいて、観覧車が窓に収まりきらなくなって、そして駅に着いた。
やはり、僕たち以外もみんな降りる支度をしている。
電車を降りて改札へと向かう。改札の外はもうすぐに入場口のはずだ。
「なんか混んでそうだし大きいし、満喫できるかなあ」
羽菜がそう言うので、僕は、
「まあ全部回るのは絶対無理な代わりに、人が少なめのところもあると思うよ」
「そうかねー」
いやわからないけど。でも……流石に今日は夏休みの序盤の平日で、お盆休みとかでもないし。
それで混んでたら、やばい。結構都心からは離れたところにあるし……大丈夫……
じゃないかもしれないですね。
お昼なのに、開園前ですかというくらいチケット売り場に人が並んでいた。
「あ」
「ほらやばいよ拓人」
「やばいね」
でも、逆にもう遊ぶのをおしまいにして帰っている人も結構いる。
だから……なんか穴の空いた箱に水を入れる問題みたいな感じで、あんまり中にいる人の人数は変わらないんじゃないかな。
そう思うことでなんとか安心した僕は、チケットの列に並んだ。
チケットは自動券売機で、しかもなんかすごい手際のいい自動券売機なのか、僕の前の人はどんどん減っていった。
僕の番になる。
はい、学生二枚……。
お金を入れてボタンを押したらチケットが出てきた。
「羽菜ー、買ったよ」
「ありがとー」
よし、これでやっと遊べるぞ。
チケットを切ってもらって入場した。
僕がチケットを買っている間に羽菜がもらってきてくれた案内マップを二人で見る。
……。
どこから行くのがいいのかよくわかりません。
「あっ、ここのQRコードから今の待ち時間全部見れるって」
「おお」
時代が進んでるなあ。わざわざそのアトラクションのところとかまで行って看板とか見なくていいわけね。
便利だなあ……。
僕が色々とお年寄りポジションになっている間に、羽菜はさっさとQRコードを読み取り、
「あ、待ち時間ゼロ分結構あるよ」
「ほんと?」
「うん、まずこことか行こうよ」
「おっけー」
羽菜と僕は、迷わず歩き出した。




