お土産を買った
午前に軽く練習して、お昼ご飯を食べた。
十二時過ぎ。宿を出る前に、おばあちゃんと実夜さんにお礼を言って、おじいちゃんのバスに乗り込む。
実夜さんと羽菜はいつまでも何か二人で喋ってたけど、すごく仲良いんだな。まあ去年からの知り合いってのもあるのかな。
とか僕は考えていた。
今は隣の羽菜は少し静かだ。
もう夏合宿も終わりか。
羽菜からは、去年の先輩たちは一番最後まで残った人でも、秋の大会で引退したと聞いている。
僕も普通に考えればそうなるんだろう。
その後に一回か二回、まだ出れる大会があったはずだけど、僕も本格的な受験勉強が始まってしまう。だから出るかはまだ未定。
だから……あんまりのんびりな雰囲気じゃダメなのかもな。出れる試合はもう数少ないんだ。
せっかく今日はのんびりしようと思っていたのに、そんなことを考えてしまった。
ダメだ。ちゃんと楽しもう。
だってこの三日半、一緒に練習してくれたのは、羽菜だから。その羽菜と、ちゃんと楽しく終わらないとだよな。
僕はうなずいて、そしてバスに揺らされながら窓の外を見た。
「あ、あそこすごい。山からはみ出てる観覧車」
「おおー! ほんとだほんとだ! あそこにいくんだよね?」
「そうだよ」
僕はうなずいて、羽菜ははしゃいだ。
そして僕もテンションが少し上がり、そしてまだまだ羽菜といたいと思って、だからまた楽しみになってきた。
バスは駅に着いた。ここから数駅で目的地のすぐ近くの駅に行ける。
「ありがとうございました」
「またきてね。合宿じゃなくてもなんでも遊びにきてくださいな」
「はい。お世話になりました」
僕と羽菜は頭を下げて、そして駅の出口の一つから、改札へと向かう。
出口から改札を探すのはとてもわかりやすいね。
電車の本数があまり多くないので二十分ほど待つことになった。だから駅の売店でお土産を買うことにした。
「うーん。おおおおお!」
「どうしたの拓人?」
「この駅限定の、魚の餌がある。うちの魚たち食べるかな?」
「魚へのお土産ですかい……」
呆れる羽菜。まあもうすぐ魚を飼う予定の羽菜も、飼い始めてしばらくすれば僕と同じくらいは愛着わくよ。
しかも限定の魚の餌なんて珍しいよ。
でもあんまり変わったもの食べさせると良くないかな……。
結局とりあえず買ってしまった。
蓮花と友輔や、家族へのお土産と一緒に。




