シャトルラン
そして、美留さんは、それぞれ個別の特訓を始めた。
僕は回転の対応に慣れるためのラリー。
羽菜は……シャトルラン……。
「やだー。私拓人と練習したいよー」
「羽菜ちゃん……私と拓人くんが仲良くなったら困るのかしらね」
「別にいいもんー。でもはぁ……」
ドレミファソラシド〜
羽菜が走ることに集中する。
シャトルランってなんであんなに地獄な仕様なんだろうねあれ。
だって景色がおんなじ20メートルのところを往復させるしさ、だんだんリズムははやくなるしさ、誰も喜ばないところで工夫してんじゃん。
……羽菜がかわいそう。
でも体力は必要だもんな……。
今何回目くらいなんだろう?
五十回目くらいかな。
羽菜結構頑張ってるね。
「ちなみに呑気に応援してる拓人くん」
「あ、はい」
「あなたは回転読む能力が足りてないから、これはこれで練習量必要なんだからね」
「あはいごめんなさい」
「はい、じゃあテンポ上げてラリーするから」
「お願いします」
そして始まったラリーのテンポが……速い!
これ大発見したわ。
シャトルランと連動してラリーのテンポが速くなってるわ。
こっちも地獄仕様でした。
そんな感じで全くだれることなく特訓は続いた。
羽菜のシャトルラン以降は、羽菜と僕はほぼ同じメニュー。
動きを早くするために、二人で反復横跳びしたり、あと台から離れた後ろの方でラリーをしたり。
色々な練習をして、一日でだいぶ改善されたところがある。
羽菜の体力はすぐつくものではないかもしれないけど、もっと走らないとなあ、という気持ちに僕までなった。
「お昼ご飯は……外で私の登山用自炊セットでご飯作ってあげます!」
十二時半ごろにそう言い出した美留さん。
そして渡り廊下側とは反対の出口から外に出る。
羽菜と僕もついていった。
外で火を使って何かを煮るようだ。
何を煮るんだろうか。
と見てたらわかった。
「カレー……!」
「ですねー。ご飯も非常用のやつでごめんだけど、これも美味しいよ」
これはいい。
なんか山奥でキャンプしてるみたいな気分になれるし。
練習は辛かったけど、いい先輩すぎる。
なんか登山とかキャンプもしてみたくなってきたな。
まあいつか羽菜と行ってみたいね。
と自然に思った。
「いい匂いすぎてお腹がどんどんと空いてくる」
そうつぶやく羽菜と僕は目があって、そしてそのまま一緒に、出来上がりそうなカレーに視線を移した。




