厳しい練習はじまり
「よーし、じゃあ、練習の時間ね! いつもどんな感じの練習してるの?」
美留さんが訊いてきた。
「だいたいは美留先輩のいた時と同じです。だけど球だし練習とかはあんまりしませんねー。二人だし」
羽菜が答えた。
「なるほど。じゃあ、球だし練習しよう。しかも超複雑なコースと回転の、私オリジナルの球だし」
「うわなんか怖い」
「怖くないよー」
美留さんがものすごく楽しそうに笑うので、僕も羽菜と同じく、相当きつい球ばかりくる球だしなのではないかと思う。
だからおびえはじめていた。
「じゃあスタート。十球交代ね」
「はい」
先に球だしを受ける羽菜が構えた。
そして一球目。
台の角に来た。
なんとか返す羽菜。もうほんとにラケットの先になんとか当てた感じ。
野球なら外角の球になんとか当ててのゴロだ。
でもちゃんとネットを超えたのが偉いよ。
でも美留さんはそんなの当然で気にしないというように、二球目を反対側の角に出した。いやあ鬼畜だな。
羽菜は残念ながらボールに触れない。
さらに三球目は浅い球。これは……返せたけどなんか羽菜の脚が固まってる。もう瞬発力を失ったか。
そしてその調子で十球目まで終わった羽菜は、床に座り、床を滑りながら退散していった。
これはかなりスパルタな先輩だったね。
でも壁打ちでハイテンポに球を打ち続け、さらにボール拾いでも体力をつけた僕は、適性があるような気がした。
しかし本当は全然返せないという現実だった。羽菜よりは球に追いつけてはいる。
だけど回転が読めなくて、それで返せないし、バウンドの方向に戸惑ったりして反応が遅れてしまうのだ。
で、結局僕も疲れ切って座ってしまう。
座禅を始めた羽菜と僕に、美留さんは、
「はい二周目行くよー。水飲むなら飲む。休むのもいいけど辛いなら。でも返せるまで練習は続くよ」
怖い。でも水分補給と休憩を大切にしてるのはいいね。
僕は二周目も頑張ろうと立ち上がった。
けど羽菜は立ち上がれてない。
その結果、いつも以上に、大きい胸が重そうに見えてしまっている。
そんな羽菜を見て、美留さんは、
「羽菜ちゃん、体力不足ね……」
とつぶやいた。




