コーチがくる?
羽菜の部屋に着いた僕はすぐに羽菜とゲーム開始。
また夜の十二時半に電気が消える仕様なんだろうけど、とにかくそれまでは遊ぶぞ!
という意気込みだったんだけど。
なんと驚いたことに二人とも、ケアレスミスしかしないレベルにゲームが下手になっていた。
なんだかんだでやっぱり眠いからですねー。
でもこれはこれでいい勝負なので、僕たちは楽しくゲームし続けたんだけど。
……眩しいよ。
もう朝……だったわマジで!
隣を見れば羽菜。
二人とも畳の真ん中で寝落ちしていた。
羽菜は眠りながら寒いと感じたのか、上着をお腹にかぶせていた。
僕は……なんもかぶってない。
これ結構身体冷えたかも。やばい。
時計を見れば朝七時。
もう朝ごはんまで三十分だ。
「はい朝だよ羽菜……」
「よし! 拓人もう一戦!」
卓球のことがゲームのことかわからない寝言とともに、羽菜が起きた。
「……え、もしかしてこれ二人で畳で寝てました?」
「そうですね」
「うわあだらしな」
「わかる」
「んっ、なんか背中痛いし、やっぱり畳硬いなあ」
背中をさする羽菜。
「大丈夫?」
「大丈夫だと思うよ。ただ一時的に痛いだけだと思うから」
羽菜は立ち上がった。
「よかった……僕、部屋戻るね」
「うん。朝ごはんで会いましょう」
「はいー」
僕は羽菜の部屋の扉を開けて、そして廊下の空気を吸った。
やはり結構冷たい。
そして今日から合宿後半だ。
もう後半かあ……。
最終日は観光をする時間もあるので、あと練習は一日半。
だんだん時間が貴重に感じられてきた。
だから、なおさらゲームしたまま寝てしまったことを反省しているのであった。
七時半ぴったりに朝食会場に行ったら、もう羽菜はいた。
フルーツを食べ始めている。
僕は身体が冷えたからあったかいものがいいな。
和食にしよう。ご飯とお味噌汁ほしい。
というわけでご飯とお味噌汁を取りに行って帰ってきて、羽菜の前に座る。
「そういやさ、今日はどんな練習する?」
僕は訊いた。
「昨日の反省を踏まえて……って言ってもまあまずはいつも通りの練習と動画分析でいいんじゃない?」
「そうだね、でその後は……」
「どうしようか」
僕と羽菜が考え込んでいると、羽菜のスマホが鳴った。
「マナーモードじゃなかったね」
と言って画面を確認しつつマナーモードにしようとしていた羽菜が、
「ええ⁈」
「なんか驚いてる」
「浜崎先生からだったんだもん」
「なんて?」
「『そろそろだらけてきたと想像するので、コーチを向かわせますからね。我が卓球部のOGなので、お楽しみにー』ってきたよ」




