山梨のお菓子を食べた
というわけで気楽にやっていたら、いつの間にか負けていた。
だけど絶対初めよりは慣れた。どこに打つかわからない相手のプレースタイルに。
だからもう一戦お願いした。
そして二戦目は、相手のミスを誘うレベルにラリーを繋ぐことができて、なんと勝てた。
羽菜以外に、初めて勝てた。
一ゲームだけだけど。
でも羽菜の時もまずは一ゲーム取ったところから始まった。
うん。そうすると、次はもっとゲームを取っていこうって思えるし。
こうやって、成長していくんだ。
それにしてもやたらうるさいなー女子陣は。
僕と谷田くんはめっちゃ静かさのある試合を真面目にやってるのにね。
と、見てみたら、試合をお休みしておしゃべりしてるし。
まじかよ。
「拓人ー! 休憩しない? こっちにね、山梨限定のお菓子めっちゃあるよ」
「そ、そうなの?」
「俺らの部活お菓子好き多いんで。溜め込んでるんですよね。よかったら食べっててください」
「わかった。ありがとうございます……」
谷田くんがそう言うなら食べさせてもらおうと思って、僕と谷田くんも、羽菜と山本さんのところに行った。
そしてそれから、それぞれの地元の話とか、部員が少ないことによる悲しみとか、色々な話で盛り上がった。
仲間を見つけた感じだ。
実際、まだ会ったばっかりだけど、仲間なくらい共通点あるし。
「えー、でも幽霊部員とかたまに来る人とかもいなくて完全に二人ってすごいですよね!」
山本さんが言う。
「すごいの?」
「すごいというか、完全に二人だとほら、お互いがお互いのこと好きじゃないと楽しくできなさそうだなーって思います!」
「好き……」
「あ、友達としててもいいですよ! あ、でも付き合ってるんですか? そこらへんどうなんでしょう?」
「友達!」
羽菜がめっちゃ宣言する。なんかイントネーションに迷いがあったのは気のせいだよね。
山梨限定のお菓子をたくさん食べすぎて、歯になんかつまってたんだろう。
僕はそう結論づけつつ、体育館の中央でやってるバスケを眺めた。
中学生なのにみんな背高いなあ。
休憩をおしまいにした後もまだまだ試合をやり、普通の練習試合の三回分はできた。
だって両校とも二人しかいないんだもん。
ちなみに山本さんは徹底的に繋ぐタイプだった。
なんというかすごく球を読むのがうまくて、だからかなりどこに打っても手が届く。
とても一試合が長くて疲れてしまった。
それが練習になっていいことだったんだけどね。




