練習試合を始めましょう
「はいはい。じゃあ、あんまり広くないけどここが練習場です。体育館のすみっこ」
実夜さんと同じくらい元気そうな女の子が早速案内してくれた。
もう一人いるのは男子だった。
まるで羽菜と僕みたいだ。
世の中、少ない人数で頑張ってる部活、沢山あるんだね、うん良かった。みんなで頑張りたい。
「じゃあ早速試合とかやりますか……? あ、その前に自己紹介とかしないとですよね。私は山本優華です」
「あ、よろしくお願いします。美羽原羽菜です」
「庭梨拓人です。よろしくお願います」
「……あ、俺は谷田長之って言いますー」
「じゃあ試合やりますかね……?」
「やりましょう!」
特に張り切る山本さんと羽菜。
体育館の隅っことはいえ、ちゃんと卓球台が三台もあって、だからまず、男子同士と女子同士で試合をすることにした。
「お願いします」
「お願いしますー、あ、高校生なんですよね?」
「あ、うん、そうなんです。初心者なんですけど」
「おおー。あの可愛い方につられて始めたんですか?」
羽菜を示す谷田くん。
「ああー、いやまあ、卓球やって楽しかったし」
そう答えつつ、谷田くんの言う通りなところもあるかも、と思った。
でも、もう卓球が好きなのはそうだから。
練習試合とはいえ、一回でも多く勝利するぞ。
その前にラリーとラケット交換だけどね。
その試合前にやることを終えた僕の感想は、結構普通のプレースタイルで基礎的な打ち方が上手い相手だなと。
コーチとかになれそう。
コーチにならなくても後輩の指導とかうまそうだ。
「お願いします」
「お願いします」
そして試合開始。
まあスタンダードなフォームだからコースは読みやすい……は?
予想と真逆に来た。
まさか……同じフォームでいろんな回転やコースの球を打てるのか……この人。
やばいよこの人。技術がやばい。
ただ僕も前よりは成長してるので、またショーバンを使うなどして、なんとか自分からショットを決めに行くこともできた。
だけど劣勢だ。
うううううう。いや、同じフォームって言ってもさ、よく見たら違うんじゃないかな。
僕はずっと観察していた今までの記憶を集める。
くそ。やっぱりあんまり違わないかも。同時に動画で見比べたりできないから、少し違ってもわからない。
隣の羽菜と山本さんのコートを見てみた。
めっちゃ楽しそうに試合してるよ。キャーキャー、遊園地ではしゃぐJKみたいな声出してるし。
よし、僕ももうちょい気楽に行く。気楽に行けば、意外と気づくかも。相手のフォームの違いとかにも。




