羽菜 ①
羽菜視点です。
拓人と初めて出会ったのは、拓人が思い出してくれた通り、テニススクールだった。
確かあの時は小学二年生くらいで、小学生が入る市のテニススクールに私は参加していたのだ。
テニススクールは、学年で分けるのではなく、上手さで分ける方式だった。
AコートからFコートまであって、一番うまいのがAコート、一番下手なのはFコートだ。
で、私と拓人は始めてから一年経ってもFコートにいた。
まあ一番下手だったわけ。
でもなんだかんだでそこのところに親近感がわいて、仲良くなったりして。
だから、双方の親に連れられて、テニススクールの後に、ご飯を食べに行ったりしたこともあった。
あの時、私は結構拓人が好きだった。
でもそれは、恋ではないというか、たとえそうだったとしても不純物が多すぎた。
お互いいつまでもテニスが上達しないっていうのに親近感を持つのは、どう考えたって、恋でも、友情でもない。
だから私は幼いながら、私ってひねくれてんなあって自己分析してたりした。
そんな日々が続くも、小学校四年生になってまだFコートにいて、いつまでも上手くならない私は、「お金がもったいない」って言われて、テニススクールをやめさせられてしまう。
それからはずっと疎遠だった。
私はテニスをやめて、中学は緩そうな卓球部に入った。
卓球は、そこそこ上手くなった。
といっても大会で一回戦勝てることがそこそこあるなーってだけ。
でもそれでも少しやりがいを感じていた。
しかし、高校に入って、卓球部に入ろうとしたら、もう引退が近めの先輩しかいなくて、じきに一人きりになると知ってしまった。
完全に、そこそこ偏差値が高いところって選び方をしてしまった。
だから卓球部が盛んな高校かをチェックしてなかったのだ。
そして先輩たちが引退して、一人の部活動が始まってしまう。
でもそんな中、私はみつけた。
まだテニスをやめてなくて、私の住むアパートの裏で壁打ちをする、拓人を。
まさか、あんなに下手くそな私たちだったのに。
まだ続けてたのね。
私のことを覚えてるとは思えないけど、私は思わず窓から顔を出して、そして話しに行ってしまった。
でも、話を聞いたら、思ってたのとは違った。
ボール拾いばっかりやらされてて、ここでしかラケットを振れてないって言うし。
でも、それが私を安心させてしまう。
またあの時と同じなんだよ。
よくないタイプの親近感が湧いてしまったのだ。
テニスをやめて、卓球をぼっちで練習してる私とあんまり変わんないなって。
だから……。
私は目の前でハンバーグを食べてる拓人を見た。
一緒に卓球してくれて、嬉しかった。
拓人も楽しそうでよかった。
正直、一緒にご飯食べてるだけで、どきどきしてる。
けど……。
だからって、拓人を好きって言えは、しないんだよね。自分自身にすら。




