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羽菜③ お風呂

 お風呂には私だけしかいなかった。


 私が濡れた地面を歩く音まで、とてもよく聞こえる。


 今日はとても疲れたな、まだ一日目だけど。



 私はシャワーを浴びながら思いだした。


 去年の合宿は、みんなでお風呂でかなり騒いじゃったなあ……。


 とにかく動いて笑って、のぼせてないのにのぼせたみたいな感じで。


 今年は一人。


 静かなのも……好きだな。


 正直去年の合宿よりは楽しくないだろうなって思ってたけど、私が拓人のこと意識してるだけあって、二人の合宿は、楽しいし、少し幸せだし、やっぱりいい時間だった。


 だから……どうなんだろうね。


 いろいろとね。


 私は、去年の記憶がある程度残っている浴場を見渡した。


 と、すると扉が揺れて、そして開いた。


「あ……こんばんは……」


「あ、こんばんは……」


 宿のおばあちゃんとおじいちゃんのお孫さんだった。


 去年も話したりしたから覚えてるけど、向こうはいろんなお客さんと話してるだろうから、覚えてないかな。


 と思ったけど、


「もしかして、あなた、去年お風呂で騒いでおばあちゃんに注意されてた人ですか……?」


「あ、そうです……去年は失礼しました」


 覚えてたか……。


「ううん、私も騒ぎますよ、旅行行ったらお風呂で。あ、それよりも……」


 お孫さんの女の子は、私の周りを少しみた。


 今年はかくれんぼしてる……なんてこともなく、普通に一人なだけ。


「先輩たちがみんな引退してですね、今年は女子私一人なんです」


「ああ、そうなんですね」


「はい」


「男子と一緒に練習してるんですか?」


「そうですね、だけど、男子も一人で」


「あー、結構部員が減ってしまったんですね。あ、でも、てことは、お二人で愛し合うしかないですね!」


 あ、そうだったねそういえば。この女の子、恋愛の話したがるタイプだったね。


「まあ友達みたいな感じで仲は良くなってると思いますけど……」

 

「なるほど、で、だけど、もうあなたは恋愛的に好きみたいな……?」


「……」


「おおおっやっぱり!」


「いやまだ違うっ」


「えじゃあ、でも、もうほぼ好きなところまでは?」


「来てるかも……」


 なんでこんな正直に答えさせられてるんだろうか。まあいいや。


「いいね! いやー確かにもう去年よりも恋してるオーラが出てるかも。なんかあのー、胸もすごく大きくなりました?」


「なった……けどそれは」


「関係ないですねー、でも一年振りに会えたので思わず注目しちゃいましたごめんなさい」


「いや大丈夫」


 そしてそれからお互い身体を洗ったりしてて。


 私が身体を洗い終えたころ。


「恋バナ的なの、もっとしませんか?」


 女の子がそう言った。

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