練習おわり
「……拓人は逆をつかれてることが多いねー、あ、それと、ここでもう少し膝曲げたほうがいいかも」
「なるほど。そうだな。動画見てると」
動画分析中。
ただ試合しまくるよりも、すごく成長できる時間が流れている。
「私の方でなんか気づいたことある?」
「えーとね」
「脚以外で」
「はい……えーとね、あ、ちょっとたまにフォア打った後身体が左に傾きすぎてる?」
「うん、そんな気がするねー確かに」
羽菜はうなずいて、立ち上がってその場で素振りをして試行錯誤。
こうして話し合っていって、弱点を見つけたら、次からのゲームて生かしていく。
それを繰り返して何度も羽菜と対戦し、山が暗くなり、ホールの蛍光灯が一番明るいものになった。
「勝ったね! ゲームカウント12対9!」
「負けてしまった……けど成長はした、と思ってみたい」
「してるしてる。絶対してる! はいご飯の前にお風呂行こうよ汗流すよっ」
「はーい」
羽菜と僕は台をたたみ、倉庫まで引いていく。
台を倉庫にしまい終えたら、ホールの電気も消して、渡り廊下へ。
「おおっ! 星が綺麗すぎ。なんか無数のピンポン球を打ち上げたみたい」
「いやそれはわかんないけど、白い星が多いね。たまにオレンジっぽいかな」
「だからピンポン球じゃん」
「たしかにな」
ピンポン球は光らないけど、卓球になんだかんだハマっている僕には、ピンポン球は特別なボールに思える。
テニスボールもそう。
やればやるほど光って見えるっていうのは、気持ち的にはあるかもしれない。
宿舎の中に入ると、到着した時にロビーでくつろいでいた高校生集団が歩いていた。
何部なんだろう。ホールを使わない部活だから……写真部とか?
僕と羽菜はそれぞれの部屋に帰り、お風呂の準備。
そしてお風呂に向かう。
別に一緒に向かう必要ない……けど、なぜか向かってしまった。
廊下を進み、廊下の端の階段を降りる。
男湯と女湯の暖簾が前に見えた。
おお。すごいな。
久々に来た、大浴場。
テニス部の合宿ではホテルの部屋にあるお風呂だったし。
「はい、ばいばい」
「おつかれ」
羽菜と別れる。
男湯には誰もいなかった。
脱衣所のカゴが全て空なのでそう判断。
思えばあの他の高校の人たち、もうお風呂上がった後っぽかったな。確かに。
扉を開けると、黒い石の地面の浴場。
「あー、広い」
声もかなり響くし、お湯の流れる音もとても大きい。
僕は疲れをとるべく、すごく満喫しながら、身体を洗い始めた。




