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また抱きつかれた

 それからかなり練習して、休憩。


 ボール拾いがハードな以外、いつもの体育館の練習と変わらない。


 けど家に帰らなくていいし、窓からは校舎とグラウンドではなくて山が見える。


「疲れた〜」


 床に寝る羽菜。床はまあまあ綺麗で、少なくとも体育館の床よりは綺麗である。


「疲れたね。もう部活一回分近くやってるじゃん」


「えっそんなに……? ほんとだね」


 寝たまま体勢を変えて壁の時計を指さす羽菜。


 その時に袖の中の脇が見えて……いやだからそういうところは見ないようにね。よく見るのは相手の動きとかボールだから。


 でも羽菜は今僕の相手だから見てもいいのかな。うん見よう。


 自分の行動を正当化する方法を無理やり考えながら、僕も寝転がる。


 天井は体育館よりはだいぶ低い。


 わざとやろうと思えば、天井にピンポン球を当てられそうである。


「拓人勝負しようよ。休憩がてら」


「おお、どういう勝負でしょう?」


「先にあの天井の染みにピンポン球当てられた方がロビーの自販機でジュースおごってもらえる」


「おっけ」


「ルールは寝たままボールを投げる」


「了解」


 僕と同じようなことを考えていたんだろうな羽菜。


 だから勝負も僕が乗り気になるものだった。


「じゃあまず一投目っ!」


 羽菜がピンポン球を投げる。


 天井の染みとは結構ずれたところにあたり、また羽菜のところに落ちてきた。


 羽菜はそれをキャッチしようとするがとれず……だけど、なんと羽菜の胸の上に着地して、ほとんどバウンドしなかった。


 すごい!


 ピンポン球くらいの大きさの小人になって羽菜の胸の上に着地したい。


「はい、拓人のターンだよ」


「よし」


 小人になりたがっている暇があるなら、ジュースを手に入れるのが現実的。


 僕は染みに狙いを定める。


 とその時染みの一部が動いた。


 ええ、なんか小学生の時読んだ怪談みたいな感じ……?


 と思ったらなんと、あれが天井についている。


 あの……ゴキブリですね。


 羽菜は気づいてんのかな。


 まぁ……とりあえず投げるか。


 お! なんとコントロールの良い僕の投球。


 染みにあたりました。


 けどゴキブリ……にもあたりました。


 ゴキブリとボールが、ピサの斜塔からの実験のように落下する。


「え?」


 羽菜がゴキブリを認知する。


 そしてなんと素晴らしき着地能力を持っているゴキブリなのか知らないけど、ゴキブリは……羽菜の胸の上に着地した。


「こ、これ、ゴキブリじゃあああんんんんん!」


 羽菜が声をあげて僕に抱きついてくる。

 

 怖い時とりあえず抱きつかないで!


 いやだって胸がどうか以前にゴキブリさんついてるから。


 僕と羽菜の間に挟まってるからね!


 僕は起き上がり羽菜をはなす。


 すると、ゴキブリが床に落ちた。


 めっちゃ元気。さすが、羽菜のおっぱいの圧力程度じゃ全くダメージがない。


「さ、さわれる?」


「さわれるよ」


 僕は捕まえて、窓から山に放った。


「す、すごいね」


「いや毒とかはないから危なくはないよ、ハチなんかと比べたら」


「でもきもい」


「そうだな。あ、そういえばあれだぞ。僕染みに当てたぞ」


「ああ……そうだったねそういえば、おめでとう」


 羽菜、テンション低いけど、絶対ジュースおごるからじゃないな。


 ゴキブリのダメージがでかすぎたみたいだ。


 うーん。山の中だし虫は入りまくりでもおかしくないからな。頑張ってほしい。


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