広すぎる
合宿といえば同じ部屋の人とわいわいするのが楽しいというかそれが目的みたいな説あるけど、当然我が卓球部の部屋割りは一人部屋だった。
まあ羽菜と同じ部屋なわけはないし、人は分裂しないので、どう頑張ってもそうである。
しかし一人用の部屋というのはこの宿にはないらしく、布団が二つも三つも余裕でひけそうな六畳プラス少しくらいの畳の部屋が僕の部屋だった。
羽菜に三十分後ホールで練習するよって言われたので、早速ウエアに着替える。
「おおー。私の部屋と同じ広さだった」
着替え終わった瞬間に羽菜が部屋に入ってきた。
いや普通にもうちょいで着替え中のところでしたけど。
羽菜ももうウエア姿になっている。
「あ、もう準備できた? じゃあもういく?」
「うん」
僕はラケットケースとタオルや飲み物などを小さなリュックに入れ、それを背負って部屋を出た。
ホールと宿舎は渡り廊下で繋がっていた。
といっても木の板で手作りした渡り廊下で、木が折れて足がはまってもおかしくなさそう。
ぴきっ
羽菜が踏んだところがなんか音したよ今。
僕はそこを避けて通る。
ぴきっ
いやどこでも音するなこれ。
まあ段々とこうやって木が弱っていくんですね。
渡り廊下とは違い、ホールは立派で、一昨年くらいに耐震工事とリニューアル工事をしたらしい。
卓球台が何個も置けそうだけど、二人なので一つだけど真ん中に置くのみ。
倉庫に卓球台はあるというので、羽菜と一緒に倉庫に行き、ホールの真ん中まで引っ張ってきて、そして台を開いてネットを張った。
これ気づいたけど、広いから逆に、
「ボール拾いめんどくない?」
「それ。もっと端でやったほうがいいかな」
羽菜がホールの角の方を見る。壁が二方向にある分、まだボールがあちこちにいくのが防げそうではある。
でももう台も開いちゃったしなあ。
「もうめんどいしここでよくない?」
「わかった。あ、というか確か仕切りが倉庫にあったはず……」
羽菜は倉庫に行った。
しかし、
「いやないわ。じゃあボール拾いもトレーニングということで」
「わかった。ま、こういう時こそ元ボール拾いのプロが活躍しないとな」
「おっ、頼もしいねー」
結局ボール拾いで頼もしいと思われる僕だけど、この合宿で、卓球も頼もしく思われるくらいにはなりたいもんだね。




