バスに乗って宿まで
バスでどんどん駅前よりも高いところに登っていく。
すごい。もう駅がかなり小さくて、そして線路がどこか山の向こうまでのびてるのも見える。
「なんかもしかして、すごい景色いい?」
僕は隣の羽菜に訊いた。
「うん。宿があるところはめっちゃいいよ! 精神面では休憩時間十分の一でも耐えるくらいだと思う」
「そうか。いや、ここまで高いとは。卓球をするだけだともったいないな」
「もちろん卓球するだけじゃなくてランニングもするから。景色は楽しめるよー」
「はい」
まあ校舎周りとか体育館脇往復とかよりはいいよ。とてつもなく違う。
「もうすぐで川渡るから。ちゃんと姿勢正してくださいな」
運転手さんのおじいちゃんが声をかけた。
「あ、はい……」
よくわかんないけど姿勢正すって……え、シートベルトはもちろんしてるよ。川渡るだけでそんな……ってえ、前……橋がない川があるけど。
まあめっちゃ浅いけど。でも川。
「え、ここ突っ込むの……?」
「去年も突っ込んだよー。橋が今ないからね。宿に行くにはここ通らないと」
「まじかいな。ジャングルの冒険みたいだな」
と思ってるうちにもう突っ込み始めた。
ガタガタン! ばしゃー。ぐごご。
おお、すごく揺れるし、水しぶきもすごい。窓も雨が降ったあとの状態だ。
そして羽菜の方を見ると、
「うわ」
いや見てしまって申し訳ないけど、胸が揺れすぎててびっくりした。
す、すごい……やっぱり相当大きいんだね。
「いやー、楽しい」
「わかる、なあ!」
返事をしながら外へと視線を戻す。
するとちゃんと川を渡り切っていた。
そしてこの先は舗装されてない道が続くようだった。
砂利の道を、バスが進んでいく。
やがて広々とした砂利の広場に、バスは停まった。
「はい到着だよ。お疲れさん。そんでようこそ」
おじいちゃんがドアを開けてくれたので、僕と羽菜は、おじいちゃんにお礼を言って、バスから砂利に降り立った。
幽霊が出そうだけどゆっくりできそうな宿が目の前にある。
そんなに全体としては大きくないけど、隣のホールは確かに大きめの音楽室くらいはありそうだ。
このホールを三泊四日二人で使えるのはやはり贅沢すぎる。
受付でおばあちゃんに挨拶をしてチェックイン。
宿泊者に関しては僕たち以外にもいるようで、どこかの高校生たちがロビーでのんびりしていた。




