合宿の始まり 駅に到着
そしてその合宿初日がきたんだけど、二分の一の確率を試した結果、浜崎先生は来ないことになった。
宿のおばあちゃんとおじいちゃんと、よく手伝ってるお孫さんの言うことを聞きなさいとのことらしいので、もちろんそうするんだけど。
ということで、羽菜と二人で合宿出発だ。
部の予算を削らないためか、自費で出す分を少なくするためか、まあとにかく節約するために、特急列車ではなく、普通の電車に乗って山梨へと向かう。
電車って特急じゃなくても十分速くて、だからもう気づいたら山の中を走ってるし、川は明らかに上流の清流感が出てる。
隣には羽菜が座っていて、にこにこしてる。
「うんうん山だ」
「だね」
羽菜、にこにこしてるんだけど、喋る内容は雑さがある。
テンションが上がってる分、喋る文章を考えるのが無理になってくるのだ。僕もそういうタイプな気がする。
そしてそんな雰囲気で宿の最寄りの駅に着いた。
ここからは宿のバス。
待ち合わせ場所を決めたんだけど、思ったよりも駅が大きいので迷いそう。
「うーん、ここは右か左で……右にしようかな」
「浜崎先生の合宿行くか行かないかみたいなノリ……よくない」
僕はスマホのマップを開いた。
けど、現在地が若干ずれがちなので、出たい出口と今いる場所の関係性がわからない。
仕方がないので近くにいた人に訊いた。
訊いたのは羽菜なんだけどね。
「ええ、拓人って可愛い人に話しかけると戸惑うタイプだったの? えだったら、今日の宿のお孫さん美人だからやばいよ。ていうか私は、全然美人じゃないってことかな……え、あれ、それ悲しいけど結構」
「あ、いや可愛いというか、年上の美人が……」
「そういうこと? ほんと? まあなら、宿のお孫さんは大丈夫かな」
「え、年下なの?」
「うん、中学生なはずだよ」
「そうなんだ」
なんとなく大学生くらいだと思ってしまっていた。
ちゃんと時間までに待ち合わせの出口前に着いた。
バスが止まってた。
十人くらいしか乗れない小さいバス。
まあそれでも二人のために来たので超贅沢なんだけどね。
「おお、渚ヶ丘学園卓球部の皆さんですね」
この方がおじいちゃんかな。バスからとても優しい声の方が出てきた。
「はい、皆さんということで全部員が集合いたしました」
丁寧な自虐返答をする羽菜。
「よろしくお願いします」
僕も挨拶をして、そしてバスに乗った。




