色々とあるファミレス
「ま、今日の練習はこんくらいでいいんじゃない? じゃ、まあ、おしまい……」
「ありがとう。結構楽しかった」
「なんだけど!」
「⁈ なにがなんだけど?」
「いや……おしまいなんだけど、もう六時半だから」
「あー、若干暗いね」
「ご、ごはんたべにいこうよ」
「めし? あ、飯食べに行くのいいね。いつも部活終わりに真っ暗になるまで壁打ちしてたから、なんか魅力あるわ」
「そ、そうなの、私もそうで、部活終わったらみんなで楽しくご飯食べに行くとかしたくてね、で、でも拓人と二人でご飯なのはなんだかなあ」
「いや評価低いな」
「いや行きたいって言ってんじゃん」
「はい」
微妙に思考が読めないがちだけど、なんだかんだでそこまで嫌われてなさそうだし、それに今日は楽しい部活だった。
あと、なんとなく、美羽原さん、話しやすい。
「ここはよく私が一人で食べに来るファミレス」
「へー、このビルの二階にあったんだ」
知らなかった。
中に入ると、他の店舗とほぼ同じ光景。
「いらっしゃいませー」
空いていたので四人用のソファ席をゲット。
向かい合って座る。
着替えて制服に戻っていた美羽原さんは、なんだか結構上品な感じ。
「あら、今日はお友達となのね」
おばさんの店員さんに話しかけられる美羽原さん。
本当に結構よく来てるんだな。
「今日もハンバーグセットと追加でお子様ランチ?」
「ち、ちがいます! なんですかその変なメニューは!」
「あ、あら今日は違う気分なのね」
「い、いつも違う気分ですからほら注文決まったらボタン押しますんで!」
あー、僕はもうハンバーグセットって決めてたのに店員さん追い返しちゃったよ。
「ていうか、あれだな。若干足りないからってお子様ランチ頼むの可愛いな」
「は? あの人勘違いしてるだけだから!」
「あー、そーなんかいな」
僕はそう返して、ふと、美羽原の顔を見た。
あっ。
待て。
なぜか、よみがえった。
あの、お子様ランチを食べてにこにこしている、女の子が。
いつのことだっけ。
そうだ、小学生の頃、テニススクールで、知り合った女の子で。
テニススクールでは、みんなひらがなの名札をつけていた。
確か……はねなってかいてあったけな。
いや待ったまたまたまたまたまた。
「美羽原さんの下の名前って……」
「羽菜」
「おおおい。おい、もしかして市のテニススクール通ってた?」
美羽原さんの表情が、それこそお子様ランチを前にした子どもみたいに、ちょっと幼く崩れた。
「思い出すのおっそ。つまりはね、久しぶりってことなんだよ。ま、なんとか覚えてくれて嬉しい、『たくと』」




