合宿と遊びの予定
「蓮花さん、テニス始めたんだ! よかったね!」
「うん、よかった」
卓球場で、羽菜は僕の話を聞いて喜んでいた。
そして、
「あー、それにしても脚かゆいっ!」
あれ、羽菜もかよ。
「どうした?」
「なんか知らないけど蚊がいっぱいいる! 屋内なのに」
「まじかよ」
確かによく見ると僕の周りにも小さなふらふら飛ぶ虫が。
これは蚊だな。
水道のところとかシャワー室とか、どこかに水でもたまってて、沢山ボウフラが羽化してしまったのだろうか。それか換気のためにあけた窓からわらわら入ってきたか。
いずれにしろ困るなあ……。
「とにかく明日からは虫除け持ってこないとな」
「ほんとそれ」
今日のところは予想外すぎたので仕方ない。
まあ僕の経験上、動いてる時はそこまで刺されないので、卓球しまくろう。
「で、今日もまたいつものように準備運動後ラリーからね」
「おっけー」
「あ。でもちょっと待ってその前に訊かないと」
「はい、なんですか?」
「合宿の日程決めをしたい!」
「合宿?」
「そう。もうすぐ夏休みでしょ」
「そうだね」
「だから、夏の合宿の宿の予約を浜崎先生を通してしなきゃいけないのねそろそろ」
「浜崎先生って……聞いたことはあるな」
「一応卓球部の顧問の先生ね」
「あそうなの?」
「なんか、自由にさせましょーとか言って最低限のことしかしないタイプの先生だけどね」
「そうっぽいな」
卓球部に来たこと一回もないし。
「でまあ合宿の予定を決めるわけよ」
「わかった」
「だから空いてる日程に丸つけて」
羽菜から紙を受け取る。
丸をつけていきながら気づいてしまった。
「あれ、合宿って言っても……僕と羽菜だけ?」
「そうなるね。うーんあとは二分の一くらいの確率で浜崎先生もくるかな」
「まじかよ……最大で三人……」
合宿というより、羽菜と二人で旅行に行くみたいなイメージになっちゃうんだけどそれ。
まあ別に朝から晩まで卓球するだけだよな。うんうん。
「丸つけたよ」
「ありがとー。ってほぼ丸ばっかりだね⁈」
「暇人なんで……」
「あそうなのね。あのさ……だったらあの、普通に合宿とか卓球とかじゃなくて、遊びにも、行こうよ」
「おお、いいよ行こう」
「やった!」
予想を上回って喜び始めた羽菜に僕は少しびっくりしたけど。
遊びに行こうって言ってくれて嬉しかった。そういう気持ちって、幼稚園の頃から、基本変わんないよね。




