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また始める

 そして試合があった週末は終わり、月曜になった。


 僕は、放課後、体育館に行く前に、テニスコートを覗いてみた。


 テニスコートのフェンスの外から、テニスコートの中を眺めている女の子がいる。


 誰かといえば、僕が会いたかった、蓮花である。


「蓮花」


「……拓人」


 蓮花は制服だった。制服の蓮花の隣に立って、僕もテニスコートの中を眺める。


 まだテニスをやる決心がついてないっていうのは聞いていた。だけど友輔のおかげもあり、テニス部を見に来て、また、少しでもテニスをやりたいと思うきっかけを掴もうとはしているのだ。


「僕、蓮花がテニスしてるところ見ててさ、ずっとかっこいいなって思ってた。それもね、どんくらいなんだろうね、多分もうここ七、八年くらい」


「えっ」


「いや、そういうこと、ちゃんと今まで言ってこなかったなって。僕どこかでさ、下手くそな僕が変に色々テニスのこと蓮花に言っても意味ないからやめとこって思ってた。だけど……当たり前に蓮花をすごいと思ってて……それを言いに来た」


「……私が、私なんかがテニスまたやったとして」


「……」


「また拓人はかっこいいって思ってくれるの?」


「思うよ。実力関係なしにね。だって本気だもんな。本気だから練習少しでもしたくて、そして今も悩んでるんだよな。だから……尊敬するし、僕もさ、いつか蓮花レベルにかっこよくなってみせる……いやそれは高い目標すぎたわ」


「ふふっ。拓人って……そっか。なんか私……拓人にかっこいいって言われただけでほっとしてて、まじでクズだね」


「違うって」


「違うって拓人が言ってくれて……ありがとう、ごめんなさい」


 蓮花は、自分の脇に置いた、ラケットを見つめた。そして、


「今日から……やろうかな、テニス」


「うん」


「やばい、やりたくなってきた。どうすればいいの?」


「じゃあ……かっこいいテニスしてる蓮花を、ちょっと僕に見せて欲しいな」


「……わかった」


 蓮花はラケットを取り出した。


「制服のままでいっか。もうやりたくて脚がかゆくなってきたっ」


 蓮花が脚をすごい体勢になってかく。


 パンツが見えそうなので僕は振り返って、テニスコートがない方の景色を見た。


 体育館がグラウンドを挟んで遠くに見える。


 羽菜、来てるかな。


 パンツが見えそうな幼馴染ではなくテニスに打ち込むかっこいい幼馴染を確認でき次第、今日も、体育館で練習だ。


 僕も、少しでもかっこよくなりたいから。


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