羽菜の二回戦が始まった
ピクニック気分なのはそうだったけど、終わりの時間までは早かった。
試合のスケジュールは結構な詰まり具合だったと思うので、仕方がない。
女子の二回戦がもうすぐだ。
羽菜がストレッチをしながらコートの方まで移動する。
僕は羽菜の荷物を持って、それについて行った。
「運んでくれてありがとう」
「いやいや。もうとにかく頑張れ」
「うん初三回戦進出、やってみせるぞ〜」
気合いはとても入ってる。だからあとは力の入れ方ミスるとかしないようにだよな。
まあ十分ストレッチも進んでるし、大丈夫だと思う。
僕は応援。あとはちゃんと思ったことは、気持ちでも、なんか下手くそなアドバイスでも、とりあえず伝えてみる。
それをしようと思う。
相手の人がやってきた。
あ……まじか。
さっき僕が当たった、全国行ったイケメンを応援してた人のうちの一人だ。
つまりあの人と同じ高校の人ってことか……。結構卓球強い高校らしいし、やはりこの羽菜の相手も強いんだろう。
よろしくお願いしますと二人とも礼をして、試合が始まる。
まずは握手とラケット交換から。
相手の人、すごくラケットに顔を近づけて見ている。
観察の熱意からして強豪さを感じる。
羽菜はどんな感じかというと、冷静にラケットを見て、そして深呼吸。
頭の中で作戦を練っているんだと思う。
相手は小柄、でも動きが素早そうで、だから守備範囲は広そう。
雰囲気的に、力負けしなさそうでもある。
素早いショットで相手の腕では届かないところに打つことを目指すといいのかな。と初心者の感想を心に転がし出してみたりした。
ラケット交換の後、サーブの順も決まり、羽菜からサーブ。
いきなり短いサーブを打った。
確かに卓球台のネットらへんに関しては、手足が長い人の方が簡単に届くから。
相手が小柄なことを踏まえた作戦であった可能性がある。
しかし、なんとか相手はラケットの先で返した。
それも低い弾道で。
全然チャンスボールが返ってこなくて逆に焦ったのか、それを羽菜がネットしてしまった。
「どんまい!」
という僕の声もまた、相手の人々の喜ぶ声にほぼほぼかき消された。
応援は女子男子共にいるし、僕と当たった相手の時より増えてるよなんか。
午後から応援に来た人でもいるのかな。とにかくすごく規模も大きい部活で、しかもこの羽菜の相手も、また人気な人なようだ。
まあ確かにあれだ。
完全にロリな感じの可愛さで人気が出そうなタイプだな、とは思う。
でもそれは卓球の試合の本質においては関係ない。応援には関係あるが。
だから僕の応援が相対的に小さいのは申し訳ないけど、一言一言、ちゃんと声出して伝えてくしかないな、小さくしか届かなくても。




