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ピクニックのようなお弁当の時間

 なんか、ピクニックっぽいな。


 そう思いながら膝の上に二人ともお弁当を広げる。


 けど。なんか羽菜はお弁当を手で覆ってしまった。


「へたくそになってた」


「えー」


 羽菜の視線の先には僕のお弁当。


 自分で作ったごく普通の高校生クオリティの弁当だ。


「お弁当なんてお腹に入ればどうせ見た目が整ってるかなんて関係ないじゃん」


「でも……ちょっと悲しかった」


 しかしお腹が空いてるのか、羽菜は仕方なく手を退けてお箸を持った。


「え、めっちゃ美味しそうすぎるよ。何が下手くそなのが分からん」


 おかずは綺麗に詰められていて、家庭科の教科書に出てきそうなバランスのいい食事代表まであるメニューの数々。


 流石にこれで下手は謙遜にも程がある……ということは。


「失敗したのは二段目か。ご飯の段ね」


 そう、今見えてるのは羽菜の弁当の上の段だけ。おかずしかない。

 

「バレたか……降参」


 羽菜は二段目も開けた。


「うお、なんかゾンビみたいになってる海苔が」


「可愛いうさぎのつもりだったのに……海苔がいつしかずれた」


「どんまい。でも海苔はそもそも海苔だからな。むしろ海藻ってどっちかっていうとうさぎよりゾンビに近いんじゃないの?」


「まー、そうかもね。ありがと」


 羽菜はゾンビを退治すべくご飯からどんどん食べ始めた。


 僕も食べる。


 うーん、見た目は普通だけど味はあんまりかもなあ。


 まあ僕が作ったんだからそうだろうな。


 羽菜はもうご飯の表面を完食。


 綺麗な白いご飯になった。


「お弁当、交換こする?」


 心に余裕ができた羽菜が、そう訊いてくる。


「やらなくてもいいかな……」


 味がよくない気がするので。


「えー、ピクニックの儀式じゃないの?」


「どっちかっていうとそれはお菓子交換じゃない? ていうかピクニック認定してるのかいな。このお昼ご飯」


「だってピクニックじゃん」


「わかる。じゃあ……交換しようか」


 僕はうなずいて、まあ誰が焼いてもそこそこ美味しくなってる説が高い、ウインナーを選抜した。


 羽菜は卵焼きをくれた。


 技術の必要な卵焼きを選抜するとは、もう相当な実力者。海苔の扱い以外に弱点はないと見た。

 

 とかいう料理レベルの低い僕から見た描写はおいといて、早速卵焼きを食べてみる。


 美味しい……これあれじゃん。まじであの少しの甘さが最高なタイプの卵焼きじゃん。


 あー、これは美少女が作った卵焼きだわ知らんけど。


「ウインナーは、とても明らかなウインナーでした。美味しいよ」


 すごい。羽菜が感想を考えたぞ普通のウインナーで。内容があまりない気がするけど気にしないよ。


「よしじゃあ僕も感想言うわ。卵焼きは少し甘いのがいいね。でも卓球は少し甘い球打っただけで決められるから気をつけないとだよね」


「今うまいこと言ったように見えてそこまでうまくないよ。ありがちな掛けな気もするし」


「え」


 羽菜の百倍クォリティくらいで感想返したつもりだったんだが。


 悲しみがすごい。


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