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試合は進む

 しかし何か起こしたいと言っても、全国レベル相手に早々何かを起こせるわけもなく、起こせたらそれは天才の証である。


 天才の証を示す気配が微塵もない僕は、運良くぎりぎりのところに入った球やネットイン、あとはエッジ(台の角に当たって変な風にバウンドする)などでポイントを取っているだけで、まあなんとも素早く1ゲーム取られてしまった。


 でもなんとか球を返してラリーになっている点が良かった。


 たしかに返しにくい球だし力も強いのを感じるけど、羽菜の球もなかなかすごい球なんだなとわかったし、テニスボールで壁打ちを脳死でしていたおかげか、回転にやられることはあっても力で押されることは思ったよりもなかった。


 しかし大して相手が力で押してきてないんだよなあ。


 まあそこが無理矢理感がなくてすごいところなんだろう。


 ゲーム間の休憩のため、水を飲みに行く。


「結構戦えてるね」


 羽菜が声をかけに来てくれた。


「戦えてるんですかね」


「いや戦えてるでしょ。ていうか相手全国だよ、流石に1ゲーム目は取られるでしょ。あとはこっからどうあがくか」


「なるほど」


「個人的には、相手のバウンドが大きいから、それによって動く範囲が広くなってる感があるなあって」


「確かに。それですぐ返しにくくなってきちゃうんだよな。……あ、ならショーバン狙いとか?」


 ショーバン、ショートバウンドっていうのはバウンドしてからすぐ打つことで、確かにこういう場合有効そうではある。


 それに僕、ショーバン得意かもしれない。


 なぜならこれも壁打ちの成果で、壁打ちしてた時、後ろのスペースが無さすぎて、ほとんどショーバンで打っていたのだ。


 もちろんテニスと卓球の感覚はだいぶ違うが、ショーバンのタイミングの取り方だけなら、僕は人の何十倍も練習をしてきている可能性が高い。


「いいんじゃない? よし2ゲーム目いってら」


 羽菜もそう言ってくれたので、僕は改めて頭の中で立体映像を台に投影してイメージしてみる。


 そして相手が構えたのを見て、サーブを放った。


 相手が返す。


 よし早速ショーバンで。


 僕は下方向を意識した、ミスを恐れない振りをした。


 するといい感じに球が返っていく。


 そして……相手は僕のスタイルの変化を予想してなかった。


 なのでなんと触ることすら出来ず。


 え、やった!

 

 戦力差がかなりあっても、一試合に一本くらい完璧に相手を圧倒するショットを打てるのは、普通のことである。


 それはテニスでもそうだから、わかってる。


 けど、嬉しい。


 羽菜と練習してた時から感じていた卓球の楽しさと充実さが、融合して打ち上がった感じがした。


 これはいける。もっとポイント取れる。


 僕はより一層真剣に、次のポイントも取るべく、サーブを構えた。


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