試合当日
そして、羽菜と練習しまくってたら、その日が終わりその次の日も終わり……ってなって、試合当日になってしまった。
ここ数日は試合に備えて、過度に練習しないよう気をつけた。
だから結構元気なはずなのに、脚が動きにくいのを朝から感じてる。緊張かあ、これ。
試合会場は市民体育館なので、バスでそこに向かう。
一つ先のバス停が羽菜の最寄りのバス停なので、そこから羽菜は乗ってくるはず。
乗ってきた。
「おはよう〜」
「おはよう」
なんとなく、寒い朝に感じる。
バスの中の空調が効いているせいもあると思うけど、やっぱりいつもと、僕も、羽菜も違うのだ。
「羽菜の試合何時からだっけ」
「九時だよ。ついて結構すぐ」
「そうか。僕がこんなてきとうなこと言ってごめんだけど、勝てると思う」
「うん……全然てきとうじゃないよ。なんか嬉しいもん、だって」
羽菜は隣の席で笑う。
今更だけどバスの座席って二人ぴったりだよな。
寒い分、羽菜と触れてるところはとても温度が高いなあと思う。
だんだんと市の中心部に行くバス。
終点の駅前から二つ手前の、市民体育館・ホール前で降車。
そしたらもう目の前に体育館がある。
「人多いねー。こんなに世の中卓球してる人がいるのね」
「それな」
我が高校、渚ヶ丘学園では二人だけだもんな。
たくさんの高校の人々を眺めながら、それぞれ女子の受付と男子の受付に向かって、エントリーを完了させる。
あとは僕は十時半から試合、そしてあと三十分くらいで、羽菜の試合だ。
「私は……五番コートで第一試合だった」
「おっけー。応援行く」
羽菜と僕は五番コートに行った。
相手の人はもう来ていて、準備運動をしていた。
「あれ? もしかして当たるの二回目? えーと羽菜ちゃんだっけ?」
「あ、そうだよ。あ、みゆちゃんだっけ?」
「そうでーす」
あ、すごいな、前当たった人の名前覚えてるとか。女子同士のつながり素晴らしいなあ。
そう感じながら僕はコートの外のパイプ椅子に腰を下ろす。
羽菜はコートの中に入り、上着を脱ぎ、準備運動開始。
「あれ? なんか羽菜ちゃん痩せた? ていうかやっぱり可愛いよね~羽菜ちゃん」
「えー、全然痩せてない、変わってないっていうかちょっと太ったよ。みゆちゃん、背伸びた?」
「ちょっと頑張ってたら痩せて背が伸びたよー」
「すごいねー、いいなあ」
いややっぱり素晴らしい面もあるかもしれないけど、この女子のやたら褒め合いながらもう勝負始まってる感じが怖すぎるんだが。
僕はパイプ椅子の端を手で握り、パイプ椅子ごと震えていた。




