試合をやりすぎたのと脇が弱めな羽菜
対戦相手が強いと判明した次の日も当然練習である。
さらに卓球のモチベが上がったというか、流石にもっと上達しないと相当なボロ負けをするのではないかと思い始めた僕は、羽菜に無限回試合を申し込んでいた。
「ていうか、もうこれで二十五ゲーム目だけど……疲れてないの?」
羽菜は卓球台に体重をかけて立たざるを得なくなっていた。
「ごめん。試合やりたすぎて体力のこと考えてなかった……」
「じゃあ休憩ね。て言っても拓人、疲れてそうな割に脚の動きはいいまんまだよね」
「たしかに、ボール拾いで鍛えられてたのか、脚は相当疲れててもそこそこ動くわ」
「すごい、それ試合が長引いた時に相当有利……だよっ……」
「羽菜」
羽菜の脚がガクついて、羽菜はバランスを崩した。
慌てて羽菜のところまで走り、羽菜を支える。
「ごめん。本当にたくさんやりすぎた」
「ううん。これくらいやると脚も鍛えられていいでしょ。もう今日は動かなさそうだけどね」
「無理しなくていいよ本当これから」
試合をやりすぎてしまったのは、僕が試合やってと羽菜に頼みすぎていたせいだから。
かなり反省しないと。
「う、うん。無理はしないことにする……あ、でさ、あのー、わ、脇が、くすぐったい……よっふっ!」
限界になった羽菜が笑い始めてしまった。
「ごめん。脇を抱えて支えちゃったからか」
僕は羽菜の脇をそっと離す。
羽菜はなんとかちゃんと自分で立てた。
「脇触られると結構すぐ笑っちゃうんだよね」
「まあ僕もそうかな」
「え、じゃあ脇触り実験やってみていい?」
「やだな」
「ふん! じゃあ拓人もなるべく脇はタッチ禁止ね。汗もたまってるから恥ずかしいんだからね、そこんところ注意! さ、支えてくれたのはありがとなんだけどね。はい休憩!」
羽菜は最後を一番大きく言い、壁際の床に移動して座った。
僕はなんとなく立ったまま休憩していた。
「別に……いつもらしく、隣に来てもいいんだよ」
「うん」
なんかさっき、羽菜を支えてる時、ちょっと抱いてるみたいになっちゃって、恥ずかしかったから。
それでぎこちなさが突発的に現れてる。
だけどいつも通りってスポーツでも大事だしたぶん。
僕は羽菜の隣に行った。
羽菜が笑顔で話してきた。
なんの話かと思ったら、新しい味のアイスが中庭の自販機に入ったって話。
羽菜との日常の会話、落ちつく。
今なら落ちつきすぎてくすぐられても大丈夫かもしれないし、羽菜にくすぐられてみたいかも……。
でもこれ言うと、羽菜にまた変な性癖だと思われるかもしれないので、やめとこう……。




