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初戦の相手がすごそう

「あ、拓人食べ終わったのね、ちょっとこっち側来てよ」


「あ、そっち?」


 四人用のソファ席を使っているのでたしかに羽菜の隣はスペースがある。


 僕は羽菜の隣に行った。


 すると羽菜の方がめっちゃ寄ってきた。どんくらいかというと腕がどう避けようとしても当たるくらい。


「イヤホン結構短いからさ」


「イヤホン? なんか一緒に見るの?」


 漫画とかイラストでカップルがやってるやつじゃん……。二人とも好きな音楽を聴いたり、映画見たり。


 羽菜はどんなのを僕と見たいのだろうか。


「はい準備できた。卓球の動画」


「卓球の動画ね、なるほど。たしかに勉強になりそうだな」


「うん、ちなみにトーナメント表によると、今度の大会で拓人と初戦で当たる予定なのが、この奥の黒いウエアの人だから。見といた方がいいかなって」


「へー。っていうかなんで動画が上がってるの?」


「全国大会の記録動画じゃないかと思うよ」


「は? 全国? え、僕の初戦の相手全国経験者なの?」


「そうだよ」


「うおほほらほ」


「変な声出さないでよ」


 羽菜に腕をつつかれる。


 いや、そうかあ。全国経験者ね。


 でもたしかに妥当だよな。実績ない選手は瞬時に強い人と当たるわけだから。


「羽菜の初戦の相手は?」


「わたしの相手は強いけど全国ほどではないね。都大会には出てたかな。でも多分動画はないと思う」


「なるほど」


 出場経験を重ねつつ初戦突破経験があれば少しは当たりがマシになるってわけかな。


 そりゃあまあそういう仕組みだろう。


 さて、どんくらいうまいのかな。


 羽菜が再生ボタンを押した。

 

 黒いウエアの背の高い男がサーブを出す。


 相手も難なく返す。


 でもそれだけで、あ、うまくね? ってなった。


 ぱっと見だけなら、テレビでやってるプロの試合と変わんないんだけど。


 そして台からかなり下がったラリーが続き……黒いウエアの彼が点を取った。


『きゃー!』


 え、歓声でか。


 しかも声的に八割型女子じゃない?


「……あ、解説しておくと、、この人は高校でイケメン選挙一位で女子のファンがめっちゃいて応援しにくるから」


「すごいな」


「まあ拓人は少なくとも多くともわたしが応援してあげるから安心して」


「多くともがついてるのが悲しいね。しかも羽菜も自分の試合があるから無理じゃないの」


「男子と女子で時間結構ずれてるから。初戦は私の方が先。だからぼろ負けして凹まない限りは応援行くから」


「無理しなくて大丈夫だけど……もし来てくれるなら、ありがとう。僕も羽菜の応援するよ」


「うん、ありがとう。前の大会ではボッチ試合にボッチ飯だったからねえ。一回戦突破すると午後まであるからお昼ご飯食べてるのは勝利の証なんだけど、寂しかったなあ……」


 羽菜がそう振り返る。


 だから僕なんかでも少しでも応援できるなら、ちゃんと応援しようと思った。


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