初めての勝ちと真似
「はあ……」
「あー、動けん」
羽菜と僕は並んで寝そべっていた。
卓球場の床でそうして休憩しているのである。
すぐ隣で、羽菜の息の荒さとかを感じているけど、あまりエロいなとかは思わない。
それよりもちょっと、嬉しかった。
何が起こったのかと言えば、羽菜に初めて勝てた。
一ゲームとっただけだけど。
そんなの、戦力差があっても起こりうることだけど。
でも成長を感じられて、あ、これがスポーツの楽しさだったかも、と掴むことができつつあるのだ。
その点が嬉しいし、回復したらすぐ練習を始めたい。
なかなかいい勝負で、それまでも二ゲームやってるので、疲れてる。
ああ、でも疲れた時こう、一緒に寝そべったりして休憩するのって、いい高校生の時間だなあってなる。
上に空じゃなくて、汚い体育館の天井があるけど、そのかわりここは眩しくもなく涼しげなので、よろしである。
「いやほんと拓人成長したなあ、先輩大感動」
「先輩、ありがとうございます」
「ま、ほんとは拓人が先輩なんだけどね、ごめんね」
「それは学年の話だからな、そんなの関係なく行こう」
「ありがとう……! そういや従姉妹が大学で勉強サボって三留して、後輩が先輩になったけど関係なく仲良いって。そんな風に行けたら私は嬉しいなあ。時々後輩、時々先輩」
「うんそれは賛成だけど、勉強サボって三留は良くない……」
「わかる」
羽菜は笑って、そして立ち上がった。
僕もとりあえず腰まで起こす。
頑張ろう。これからも。まずは今日の練習のこれからも。
そしてやっぱり、時々楽しむのがいい気がする。
少なくとも、今の段階の僕は。
「さて、次の練習だけど、拓人も、回り込んでフォアの練習強化した方がいいかなって思うの」
「あー、テニスでも強化するなあ」
「でしょ。テニスと似た部分もあるから結構できると思うけど、お互いラリーしながら回り込んでフォアを意識して」
「了解」
実際卓球のバックとテニスのバックは違いすぎる。だからバックでの強打は難しくて、バックを成長させつつ、回り込んでフォアも強くなっといた方が、全体的に高いレベルで、自分の卓球を高められる気がする。
早速ラリーしてみる。
たしかに球に当てるまでの感覚はテニスと似てて、やりやすかった。
しかしそのあとコースを狙って打つのが難しいし、打球は変に横回転がかかっている。
「フォームが変になってるね」
「なるほど」
「私の真似してみて」
「ほい」
羽菜のエア回り込みフォアの動きを、何度か真似する僕。じっくり羽菜を見ないと。
そしてさらに……ダンス始めた。
「それは真似しません」
「ひっかからなかったか……ダンスする拓人見て爆笑する予定だったのに」
「当たり前な」
ただ羽菜がやる分には、ダンスしてても、これまた違うタイプのスポーツ少女って感じでいいねえ。
胸も揺れてたし(これは羽菜の動きをじっくり見てたから注目してしまった……という言い訳)。




