卓球場には女の子一人だけ
次の日。
放課後目前になり、僕は悩んでいた。
何を悩んでるかと言えば、ボール拾いをするか、女の子に言われた通り体育館に行くかである。
……でもな、確かに、そこまで僕がボール拾いをがんばらなきゃいけない理由ってあるのだろうか。
はっきり言って最近疲れ果ててる。
だからとりあえず今日は、体育館に行ってもいいかもな。
「拓人ー! 行くよ部活!」
蓮花が呼ぶ声がするけど、今日は……断ろう。
「ごめん! 今日用事ある!」
「え? まじ? 事前に言って欲しいんだけど」
「ごめん、急に昨日入った」
「わかった。それにしても拓人が部活でないの、めっちゃ久々かもね。ま、いいや、じゃあ行ってくるから」
蓮花はグラウンドの向こうのテニスコートを目指して走って行った。
そして僕は、体育館を目指した。
体育館って体育の授業以外で初めてきたけど、めっちゃ混んでる。
バスケ部、バレー部、バドミントン部が主に占領。
二階の僅かなスペースに卓球台があるのが見えた。
そして、一人でいる、昨日の女の子の姿も。
「あのー、一応来ましたけど……」
体育館の二階に上がり、僕はそう声をかけた。
「……え? あ、あなた、き、来てくれたのね! やった!」
「え?」
「あ、いや、教えてあげるって言ったんだから来て当然よね、さ、始めるわよ早速。準備運動しなさいよね」
女の子はそう言いつつ自分も準備運動をする。
短めのウエアから見える脚がすごくでかい角度に広がってて、体柔らかいなあ、と思った。
それと、筋肉もありそうなのに、でもむちむちしてる太ももだなあと思っていた。
「……? 準備運動は?」
「あ、うんするする」
「ボール拾いやってばっかだったから準備運動も久々なのね、かわいそう」
「ま、まあなそうなんだよな」
そう上手く乗っかってごまかして、そして準備運動を進めた。
「ねえ、そういや名前何?」
「庭梨拓人」
「ふーん。漢字わかんないけどまあ『たくと』ねはいはい。あ、私は美羽原羽菜」
ホワイトボードに書いてくれたので漢字もわかった。
僕も隣に名前を書く。
「も、もうちょい離して書いてよ。なんかセットみたいじゃん」
「うるさいなあ」
「う、うるさいのはごめん……」
「ていうかさ、もしかして、卓球部ってさ……男子ゼロ人、女子美羽原さんだけ、みたいな?」
「そ、そうですよ! そうだよ!」
めっちゃ迫力のある返し。
あ、マジですか。
これもしかして僕、ただ打ち合いの相手にさせられるだけでは?




