フェチとお昼ご飯
「餌も買えたし、水草はめっちゃいいのが見つかった!」
水の入ったビニールの中にある水草をうっとり眺める。
これでさらに水槽が映えるし魚たちも喜ぶぞ。
「拓人、水草も好きなのね」
隣で羽菜がうなずいた。
「そうだな。確かに水草自体も結構好きだわ」
「拓人が好きなのって壁とか水草とかなのね。もしかして静止したものフェチなの?」
「なんだよ静止したものフェチって」
「知らない」
「そうですかい」
僕は水草と餌を袋にまとめ、カバンに丁寧にしまった。
雑にしまうと水草のビニールが破裂しちゃうからな。
「でも、魚も可愛かった〜」
「だよな。僕の家にも可愛い魚ばっかりいる」
「うんうん」
羽菜はうなずいて、そして時計を見る。
「お昼時ぴったりだと混んでそうだし、お昼早めにする?」
「それが良さそうだな」
「レストラン街は一つ上ね」
羽菜と僕は六階を目指した。
「ほおおおおお。何がいい? 私ハンバーガー」
「もうハンバーガーに心奪われてんじゃんかよ」
そうだった。確かに前広告だか何かで見た。
ここのハンバーガー屋はマジでうまいって。
だけど、ハンバーガーって五百円で済むイメージだけど、千円近くする。
まあいいでしょう。店員さんから水草おまけしてもらったし。
いやしかし、店員さんから水草おまけしてもらったの初めてなんだよな。
まさか……一緒にいた羽菜が可愛いから?
たまたまかな。
さて、ハンバーガーがリッチなお皿に乗ってくるらしいということで、本当にリッチなお皿に乗ってきた。
「ハンバーグ分厚い!」
「な」
「いただきます」
「はいいただきます」
分厚いが故にかぶりつきにくい。
羽菜がめっちゃ頑張って口をあけて、美味しそうに食べてる。可愛すぎですね。
そして、予想を上回って美味しいけど、顎は疲れる。
熱帯魚にあげる餌も、稚魚にはちゃんと小さくすりつぶしてあげようと心に誓った。
時間はあるし、ゆっくり食べ進めながら、時々おしゃべりする。
ふと見ると、もう店の外には行列ができていた。
よかったわ早く入っておいて。
でも無駄に長居してたら、店員さんからの「おさげいたしまあす!」みたいな帰れアピールがすごそう。
だからのんびり味わいつつも、食べて少ししたら、店を出ることにした。




