買い物に来た
羽菜と僕が最初にやってきたのは、ショッピングモール。
ああ、すごいたくさんの人。
洋服を買いに行くのかな、と思ったら、ほんとその通りで洋服を買いに行った。
「ま、拓人に無茶振りして似合ってるか訊いたりはしないよ」
「すまんなファッションセンスなくて」
まあウエアにジャージの人にアドバイス求めてもね。
よくラブコメとかで、似合ってる? とか訊くのって実際あるのかな、あれ。
まあ……主人公に好意を持ちまくりヒロインだったら自然な行動なのかね。
というわけで僕は、洋服のおしゃれなお店の中でジャージで突っ立って、のんびり待っていた。
これ、売り上げ低下の要因になってる説ある……?
僕はマネキンじゃないから大丈夫だよね。
しばらくすると、試着室に羽菜が入るのが見えた。
候補決めたのかな。あとは最終選考かな。
試着室の中に十分ほどいた後、出てきた羽菜。
僕の方に向かってピース。
お気に入りのが見つかったみたい。
よかった。
「買えた〜」
「おめでと。どんなの買ったの?」
「ここでまた出すのはあれだから、画像見せるわ。えーとね、これとこれと……これ」
「検索はや」
「もともと検索してたから。前もってある程度ネットで候補絞っとくの」
「なるほど」
だから買い物の時間が短めだったわけか。
ショッピングの伝統芸能である、「買い物が長い人を待つだるそうな人の様子」っていうのを体感できなかったな。
でもその代わり、まだ色んな買い物ができそうだ。
「拓人は何が買いたいものないの?」
「ないねえ」
「服は?」
「制服とジャージとウエアさえあれば困らん」
「はあ……」
「後ラケットの一万円があるんで金欠。服って高いじゃん」
「そっか。なんか雰囲気だけは卓球一筋少年感が」
雰囲気だけじゃなくて実際なりたい。
「まあ、全然ファッション関係ないのだったら買いたいものあるけど」
「え、何? エロ本なら私と別行動にする?」
「エロ本じゃないよやかましい。ここの五階にあるから、もしよかったら一緒に来てくれる?」
「いいよ。と見せかけてエロ本なら……」
「しつこい」
「ごめん」
五階の中の一角の目的地にやってきた。
おおおおお。前来た時より売り場拡大してね?
「ここって、魚売り場?」
「それだと食べるみたいじゃんか。ここは、熱帯魚専門ペットショップ」
「へー、確かにすごいたくさん。っていうか拓人、魚飼ってんの?」
「飼ってる。今日は餌と水草を買えたらいいなって」
「え、拓人の家の魚見に行きたい!」
「あ、全然いいよ。今度おいで。あ、別に明日とかでもいいけどな」
「うん、明日行く」
「だいぶ乗り気だな」
「私ずっとアパート住みだから猫とか犬とかは買えないけど、なんか飼ってみたいなーって思ってて。だけどなかなか行動に移せなくてね」
「なるほど。なら熱帯魚おすすめだわ。まあちゃんと水槽とか魚の種類とかある程度計画立ててからの方がいいと思うけど」
「うん。よかったら教えて」
「おう」
こうして僕が羽菜に教えることも新しくできたのであった。




