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卓球と関係ない買い物

 そんな調子で、羽菜と卓球や時々筋トレをする日々が数日。


 で、部活がない週末が見えてきた。


 羽菜以外に部員がいた時から、平日はちゃんと頑張るけど、休日は自主練したい人だけ気楽にやるというスタンスだったらしい。


『で、今週はかなりハードだったし、週末の練習はしない方がいいと思うの』


 金曜の夜、僕は羽菜とメッセージのやりとりをしていた。


『確かにそうかも』


 今まで一回も勝ててないのが悔しいけど、でも休むのも大事そうだ。


『じゃ、お互いゆっくりとした週末を〜』


『待って』


 メッセージで待ってって言わなくても、またスマホ見にくるのに。


 でも、今すぐ言いたいことだったみたいだな。


『どうした?』


『買い物、行かない?』


『まだ必要な用具とかあったっけ』


『ううん。普通の買い物』


 普通の買い物? ってあの女子が友達とか彼氏とかと楽しそうにするやつ?


 あれか。もしこれが口での会話なら、「ほんとは女子がイケメンな男子と行きたいんだけど〜」とかいうのが付け加えられるやつな。

 

 まあメッセージでわざわざ打ち込むのは面倒だから省略したんだろうけど、なんかデートの誘いみたいだな。


 う、うれしいんだけど。


 普通に。


『おっけ。どこ集合にする?』


 僕はそう返して、そして待ち合わせ場所やら時間やら行く予定のところやらを決めていった。


 

 ☆    ○    ☆



 そして次の日。


 待ち合わせ場所の駅前の鶴の像の横に立ってると、羽菜が見えた。


 卓球で戦ってると強そうな女の子に見えるし、教えてもらってるとしっかりとしている女の子に見えるけど、こうしててくてく向かってくる羽菜は、なんだか可愛らしいお嬢さんぽさがあった。


 ワンピースとかの効果もありそうだ。


「あ、拓人……はなんでウエアに下ジャージなの⁈」


「いいじゃんかよ」


「わ、私を少し見習ってよねっ。結構、可愛くした、かもしれないけどどうせあんまり変わんないよね」


「雰囲気は全然違うよ。お嬢様系かな。か、かわいいと思います……」


「あんなボロい壁に囲まれたアパートに住むお嬢様はいません」


「あ、あの壁を馬鹿にするな! あの壁はボールを跳ね返してくれるんだぞ」


「やっぱあの壁こと好きだよね⁈」


「好きだけど……」


 なんで可愛い女の子に壁が好きかどうか問い詰められてんのかな僕。


 いや平和な証拠なんだけどね。


 でもよかった。


 何がよかったって、羽菜が嬉しそう。


 かわいいって一応僕が言えたからかもしれないし、なんか買いたいものがあってウキウキしてるからかもしれない。


 何が理由でも、羽菜の笑顔は素敵だ。


 卓球してても、してなくても。


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