一緒に温泉
「いや、ほっぺを触ってた頃はまだ余裕があったな」
「いや今も余裕あるんじゃないの? ていうか、温泉入ってて余裕がないってそれ温泉に入る準備が足りないよ」
「いや……、羽菜と一緒に入るとは思わないでしょ」
「いや私もね、小さい貸し切りの露天風呂使用券が当たるとは思わなかったよ。すごく運がいいね、やったね」
「そうだな」
たしかに予想よりは普通である。
羽菜はタオルを巻いているし僕も巻いてるし、温泉はとてもあったかくてもやもやしてるし。
それにもう僕と羽菜は付き合っているのだ。
まあもう少したしかに余裕を持ってふるまいたいところだ。
けど、
羽菜の肩……が、普通の肩なんだけどね、でも、あ、服着てないんだなってなるじゃん。肩全部出てると。
「拓人さ、もし大学入って暇だったらさ」
「うん」
「卓球しにきてよ。OBとして呼ぶから」
「わかった。行くよ」
僕は少し小さく感じた羽菜の肩を触ってみた。
お湯より手の方が冷たくても、ちょっと触っても、いいよね。
「やった。あのね、私としては、毎日来て欲しいくらい。大学って空きコマだらけって聞いたことあるから……」
「いやそれはかなり不正確な情報の可能性あるけど、でもなるべく行くよ」
「うん。ありがとう」
「……でも、それでも僕が受験終わるまでは、一人……」
「うん。でも大丈夫。バドミントン部の人と一緒にトレーニングできるし、たまに一緒に打ってくれるし。まあだけど、拓人とできないのは、寂しいなあ……」
羽菜が僕に寄りかかる。肩と背中は、僕の手だけではなくて、腕に触れる。
寂しくないように、しないとな今は。
だから僕はそのままくっついてた。
そしてお湯にまとわれた静かな空間に、羽菜といた。
羽菜とのぼせそうになっても、動けないかも。
たしかに僕も寂しい。
そんな連絡とれなくなるとかじゃないけど、それでもね。
まああと、好きな女の子なんだから。やっぱりちょっと、触れていたさがある。
近くにいて欲しいし、今みたいに、結構心を許してる感があるのがいい。
そんな僕を少しからかうように、羽菜はちょっとだけお湯をかけてきたりして、だから僕もお湯をかけてあげたりした。
それだけで楽しい。
板でボールを打っていて楽しいのとおんなじかも。
楽しくて、羽菜が好きだって、確信していられる。




