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壁打ちしてたら女の子と出会った

 暑い。


 暑いよこれは。


 黄色のボール一つ一つが太陽に見える。


 僕はその黄色のボール一つ一つを掴んではラケットに乗せていた。


 太陽を操れる神になった気分だな!


 とか無理矢理ポジれる方向に持っていこうとするも、なんだかんだでやっぱりつらい。


 暑いだけが辛い理由じゃない。


 ベンチには、ボール拾いをせずに、いちゃいちゃ喋っている二人がいる。


 幼馴染の蓮花と、イケメンすぎて有名な友輔である。


 二人はこの高校なら誰もが知るカップルだし、テニスがうますぎる。


 うますぎるが故に、レギュラーの中でも強い人のみが練習に使う、「一番コート」を使っているのだ。


 そしてそこでボール拾いをしている僕は当然、テニスが下手くそ。


 蓮花と友輔に、ボール拾いをかなりハードにやらされている。


「はやくしろー!」


「はい」

 

 暑いのに急かされてるしな、はあ、悲しい。


 だけど僕はそれはもう受け入れた。


 今度の団体戦に向けて、今テニス部は一丸となっている。


 蓮花と友輔が休憩している間に僕がボール拾いをすることが、テニス部全体において最もプラスなのだ。


 だけどたまに、神の視点で、太陽に雨を降らしそうになる。


 それでも、僕はボール拾いで貢献できていると信じて、黙々とボールを集めていた。




 部活の時間が終わると。


 僕は、裏門から学校を出て、壁打ちをするいつもの場所へと急いだ。


 壁打ちをしているのは、古いアパートの裏の高い壁だ。


 まあほんとは良くないのはわかってるけど、ここしか壁打ちができる場所がない。


 僕はラケットとボールを一つ、取り出し、壁打ちを始めた。


 十分ほど経って、視線を感じた。


 上を見ると、アパートの窓からこちらを覗いている人が。


 もしかしてうるさかったかな。強くは打たないように気をつけてはいたけど。


 うん、じっと見られてる。うるさかったぽい。


「すみません。うるさいですよね。本当にごめんなさい。もう来ませんので」


 僕は謝った。


 いやずっと我慢してたんなら相当怒られるだろうなあ。


 そう覚悟していた僕に、かわいい声がかけられた。


「うるさくはないよ。ただ見てただけ。だって、毎日来るんだもん、あんた」



 ☆   ○   ☆ 



「あ、そうなんだじゃあ、部活では球拾いばっかりだからここでラケット振ってるわけねあんたは」


「そう」


 部活終わりにまだ練習するなんてすごいねとか言われたので、今の僕の状況を説明した次第だ。


 だけど、この女の子は一体誰? わざわざ下に降りてきて僕と話しにきたぞ。


 そして、


「なんか、見たことある……?」


「私のこと? そりゃ、あるんじゃない? 同じ高校だし」


 僕のジャージに書いてある高校名を見る女の子。


 この女の子も、僕と同じ渚ヶ丘学園の生徒だったか。

 

「ねえ、突然だけどさ」


「うん」


「テニス部、やめない?」


「なんで⁈突然だな」


「だってさ、そんなボール拾いばっかりやらされて、つまんなくないの?」


「まあつまんないけど。でもまあ僕下手だしな……」


「あ、下手なんだ」


「下手だよ。まあ壁打ち見ててもわかったでしょ」


「うーん。私的には、ボールの捉え方が結構センス良さそうに見えたけどなあ」


「まじ? ていうかテニスやったことあるの?」


「ないよ」


 女の子はそうあっさり返し、そして続けた。


「テニスのセンスがあるかわよくわかんない。私がセンス良さそうって言ったのは、卓球の話ね」


「卓球の話かよ……」

 

「そう。というわけで卓球だったらワンチャン上手くなるかもだから、明日から教えてあげる。じゃあ明日の放課後体育館に来てね」


「は? 明日もボール拾……」


 すばや。


 もういないんだけど。


 なんだったんだろう。今の女の子。


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