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苛立ち

後半から夜瑠視点になっています

 …何でバレた…………。


 問い質す間もなく逃げるようにして帰宅した私は自室のベッドの上で、宵凪の別れ際に放った爆弾を何度も反芻する。


 既にドレスやウィッグは父に返しているのでこの場で確認できないが、最終確認の段階では私の変装は完璧だったはずだ。

 態度も言葉遣いも意識していたからそこからバレたとは考えにくいし。何かミスをした? 


「あー……考えても全然分からない」


 どこか歯痒さを覚えていると、唐突に去年の運動会で宵凪と交わした言葉を思い出した。


 そう言えば、何か瞳に指す光の指し方で判別できるとか変態じみたこと言ってたような。

 髪型を変えてから見分けがつかない、なんてほとんど言われなくなったものだからすっかり忘れていた。


「てことは、あのバスの話は。もしかしてそういうことなのか。……あー、やられた」


 初めから私が夕立だと気づいていたとすれば、あの話は確実に罠。

 あの日、バスに乗っていたのが夜瑠ではなく私だと知られてしまった。


 さすがは桜小路の長男。まだ子供なのに手腕が凄すぎる。




 ……まぁ、バレてしまったものは仕方ない。

 いくら悔やんでも過去は変えられないのだから。時間を無駄に散らすぐらいなら、悔やむよりも今後の方針を考えるべきだ。

 夜瑠の友達作りに桜小路の対処、天城院に身バレしないための対策。

 ただでさえ問題がこんなにあるのに余計なことなんて考えている暇はない。


 そう自分を一喝し、泥沼に陥っていた思考を強制的に立ち直らせる――――

 ―――時同じくして、自分のお腹からぐぅ、と情けない音が鳴った。


 時計を見ると短針は七を指していて、夕食の時間に差し掛かろうとしていた。挨拶やら昼食やらで結局帰宅したのが二時ちょっと過ぎだったから、かれこれ四時間以上この話題について考えていたことになる。


 かなりの時間を無駄に消費してしまった。

 四時間もあればもっと色々なことがやれたはずなのに……。

 くそ、絶対に許さないからな、宵凪……。私をこんなに悩ませやがって……!!



「夕! ご飯よ……って、どうしたの? 顔が怖いんだけど」

「何でもない。気にしないでくれ」

「そう? ま、いいわ。早く行くわよ」


 腹が減っては戦はできぬ。ご飯を食べたあと今後の方針を練ろう。

 まずは夜瑠の友達作り計画から考えていこうと思う。

 





◇◇◇◇◇◇



 夜瑠がそれに気づいたのはシャワーを浴びた後、自分の部屋に戻っている時のことだった。


「あれ、光…」


 夕の部屋から光が漏れていることに気づいた。

 家の扉は鍵を閉めると中の光が漏れない仕組みになっているはず、なのにだ。


「鍵を閉め忘れたのかしら、はぁ、なにやってんのよ……」


 そう思いつつ、一応忠言だけはしようと私は扉を開けた。


「ちょっと、夕……? あれ?」


 部屋の中には誰もいなかった。シャワーでも浴びにいっているのだろうか。だとしたら完全に入れ違いだ。


「だったら電気ぐらい消しときなさいよ! まったくもう」


 ひとまず付けっぱなしになっている電気だけでも消しておこう、と私は照明のスイッチを切ろうとして。

 あるものが目に入った。


 それは夕の筆跡で書かれたプリントだった。


 先程までいたであろうベッドの上に散らばっているプリント。人の部屋のものを勝手に見るのはいけないこと。

 だと知りながらも私は好奇心に負け、それを拾い上げた。


「何よ……これ……。夜瑠友達作り計画?」


 内容を見て、絶句した。


 プリントには私に友達を作らせるためのプランがいくつか書かれていたのだ。


 最近何やら夕が悩んでいたことは知っていた。

 ただ、それがなにかは知らなかった。

 幼い頃から、私たちの一歩先を常に見据えてきた夕のことだ。私には考えもつかないようなことで悩んでいるのだろうと思い込んでいた。


「私のために……悩んでいたの?」


 だから、まさか自分がその悩みの種だとは一切考えなかった。

 何度も考え直したのか斜線ばかり引かれているプリントを眺めながら呆然としていると、夕が戻ってきた。


 シャワーを浴びて、緩くウェーブした髪を手でクルクルと弄りながら鼻唄混じりに部屋に入ってきた夕は私の姿を見てポカンと口を開けた。


「……え、夜瑠?」

「これはどういうつもりなの、夕!」


 プリントを見せると、夕はこれでもかと言うほどに慌てた素振りを見せた。


「あっ、いや、それは……ええっと……そのですね……」


 弁解しようにも言葉が出ないと言った様子で狼狽える夕。


 その態度にイラッとした。



 間違ったことをしていない夕にそんな態度をされる不甲斐ない自分がムカついた。




 だから私は大きな声で宣った。


「余計なお世話よ…………馬鹿……! 友達ぐらい私一人で作ってみせるわよ!」



 不甲斐ない自分との決別のために。

 夕に余計な心配をかけさせないために。







 あ、でも友達ってどうやって作ればいいのかしら……。


 啖呵切った挙げ句作れませんでしたじゃ格好がつかない。


 ……真昼にでも作り方を聞こうかな。

 それでもって、夕より多く友達を作って見返してやるわ。



 自室に戻り際、廊下の窓ガラスに映った私の目は俄然やる気で燃えていた。

夕「な、何かよくわからないが結果オーライ?なのかな?」

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