素敵なお帽子
ウチの一大客先に外資系物流会社がいるんだけど、荷主がシーズンセールを行うとの事で…
作業員送り込みに忙しい今日この頃。
「へー
ハーパン可になったんだ?」
服装ルールの変更通達を見て驚いた。
フツー 倉庫内作業の基本ルールは「半袖 長ズボン、スニーカー」
でも、今年の夏は(というか、毎年?) 暑いので、遂に 客先側が譲歩した、というわけか。
へー
送り込む作業員の顔写真を、履歴書からスキャンしながら加工していると 一人、気になる顔があった。
ま、いっか。
その、まいっか、が 珍しく一騒動になるとも知らず。
「権田ァ!研修希望者資料について、確認の電話きてるよー!」
電話口にでると、先方は チャイニーズな片言の話し方で。
流石、外資系…チャイニーズですか。
話が通じるといいけどなあ…と思いつつ電話に出ると
「先日、お申し込みを頂いた タカシ サイトウさんについて、お電話いたしました。
弊社のEmployment rulesでは、『ウィッグ』着用での作業は認められておりません。Safety standardsのご理解をお願い致します。」
あ、あれね?
やっぱり、カツラだと思った?
「Medical useは許可ですが、fashionは認められません。」
…それさ… ハゲ隠しは スルーしてくれないの?
「確認しないとダメですか?」
聞けないよ!てゆーか、察しろっての。
ウチのスタッフに「ハゲ疑惑出てますから ズラか 地毛か 証明してください」、って?
「確認ですが、何で カツラってダメなんでしたっけ?」
「帽子とCategorizedされる為です。」
あー まあ 帽子と同じ扱い…ねえ。
んー 何かピンとこない。
そもそも カツラは、ファッションアイテム…か?
とはいえ、
相手は、全世界に拠点をもつ世界規模の会社。
一人のために 就業規則を変えるのも難しいし そもそも この片言外国人相手に説得も面倒臭い。
まあ、でも、ここで「はいそうですか」引くのも 癪に触る。
一応 言うだけ言っとくか。
「日本人男性にとって、
髪の毛がある、無いは、個人のidentityに関わるdelicateでseriousなtroubleなんですよ。
男性へ頭の毛が少ない事を指摘することは、女性の年齢とweightを質問する事と同様に、Sexual harassmentと認識される場合があります。」
日本で営業活動したかったら、『郷に入りては、郷に従え』ってな!
「今回は、本人に確認しますが、今後も 集人に影響する可能性があるので、それだけはお伝えしておきますね。」
私は、勤勉な日本人らしく、ド真面目に答えると 気が乗らないまま「タカシ サイトウさん」に連絡したのだった。
流石に、そのまんま「そのカツラ、ダメですよ」とは言えない。しゃーなく
「履歴書の写真を提出させて頂きましたが、
写真が『素敵なお帽子』を被っているように見えたので、『素敵なお帽子』は外して再度撮影してほしい。」
察して!日本人だったら、この遠回しの意味、分かるよね?
「そのカツラ、不自然ですよ」って。
1時間も待たずに 再度自撮りした写真は送られてきた。
…ますます 不自然なカツラ姿のまま。
有り得ないデショ、歳の割には フサフサすぎるよ!
確実に怪しいって!
しょーがなくそれで送ったけど…
もーどーなってもしーらないっと。
数日後、先方から連絡が来た。
「タカシサイトウさんへ orientationへの参加を依頼したします。
日本人にとって、頭髪はdignityであると我が社のconferenceで確認されました。」
そこまで大袈裟な話になったか!
identityとは言ったけど、
dignityとまでは言ってないよ…?
まあ、にたよーなもんだからいっか。
学習してくれて何よりだ。
私は ゲッソリ疲れた気持ちで電話を切った。
…が、orientation当日、思いもよらない電話が掛かってくるとも知らず。
当日の朝、今度は 北欧圏みたいな名前の担当者から電話が掛かってきた。
「本日お越しのタカシ サイトウさんですが、Head shotsとご本人に大きな差異が確認されました。」
は?
「Head shotsは、6ヶ月以内に撮影した写真とのagreementですが、それを越える変化が確認されました。」
え?
まさか…
すぐに、タカシ サイトウさんに電話すると
「いやあ…
暑いんで、もう 今年の夏は、ありのままで良いかなって。
冬には、ここの契約も切れてますでしょ?」
…自由だな、オイ!!
私はまた 片言客先に どう説明するか、テンションがた落ちしながら電話を切ったのであった。
こんにゃろーっ!!!




