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84 片方は遊び

 さっ、ようこそ皆さま。お腹が空いたでしょう、遠慮なく存分に堪能してくださいね。この辺りでは貴重なお肉を使ったシチューよ、お茶は食事の後でね」


 この世界での初めての食事をする。それはモフモフさんも同じだったみたいだった。テーブルマナーを知らない俺はロゼッタの食事の作法をさり気なく盗み見ることにした。


 本当はリサの食べ方、というかフォークとかスプーンの持ち方使い方を見ようと思ったんだけど、リサがなかなか料理に手をつけないもんだからついついロゼッタを見てしまう。


 テーブルを挟んで反対側のモフモフさんも、作法に関しては知らないようで、明らかにキョロキョロしていた。


 で、俺がチラチラロゼッタを見ていたら当然リサが気がついて……


「何でローズはリサの事を見てくれないの? ロゼッタ姉様が気になるの?」


 まだフォークさえ手にしていないリサが言った。


「ローズは見てくれないのに、うさぎはチラチラと見てくるの。どちらがいいかなんて考えてるの。うさぎに比べる権利は無いのに、リサとお姉様をチラチラと見るの……それでもローズはリサを全然見てくれないの」


「んっ、見てるよ。でもリサが食べないもん」


「見てないっ、ローズは姉様ばかり見る」


「あーあーリサっ、やめなさい。ローズもうさぎも食事の作法が分からないから私を見ていたの。ローズはあなたが食べないから私の方を見ていただけよ。うさぎはどうだか分からないけれど」


「俺もそうだよ、どっちを見たらいいか分からなくてどっちも見たけど」


(さすが姉さま、リサをなだめるのが上手い)


「うさぎの肉はお口に召したかしら、黒うさぎ。本来はお前の肉だったはずなのにリサが不味いって言うから仕方なく普通のうさぎにしたの。別に私はお前で良かったのだけど」


「遠慮しときます。俺不味いんで」


 何か言いたそうなロゼッタも、そこで黙ってしまった。


「食事中で悪いが、俺の娘を助けに行くって話は……」


「心配ない、マッテオ。私も行くから心配ない」


「ロゼッタも? そうか、そりゃ助かる」


 何故かそれで納得して笑顔になるマッテオ。


「ところでうさぎ、お前は何故ここに来た? そもそもの目的は何なの?」


「目的って言ってもさぁ、正直こんなって言っていいかも分からないんだけど、今こんな話をしているのがラヴィちゃんとじゃなくて、ロゼッタとだなんて想像もしていなかった事なんだ。俺やラヴィちゃんは、この世界では部外者で他所者だってラヴィちゃんから聞いた。何の為にアンタレスに来るのかって今さら訊かれたら、答えようもない軽い気持ちで来てる俺は、その問いの答えを持っていないよ」


「何を言ってるのかわからない。うさぎ、馬鹿なの」


 リサがパンをちぎりながらモフモフさんを睨む。


「ローズ、お前はどうなの?」


 ロゼッタが訊いてきた。


「俺の目的は最初から決まってる。この国の王様になるって事だ」


「えっ、本気だったのラヴィちゃん」


「そうだよっ、だからモフモフさんは護衛役という事で、強くなってね」


「それっ、俺の目的はそれだっ! 俺はこの世界で最強になるんだ」


「……シーン」


「おいおいっ、なんか言ってくれよっ。寂しいよー」


「馬鹿が力を持つと手に負えない」


 ロゼッタが毒を吐く。ロゼッタはモフモフさんに微妙に厳しい態度をとっていた。

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