57 口の悪さが役に立つ
花の回廊の終わり、そこにあった扉を開けても柔らかい日差しは変わらなかった。モフモフうさぎは写真を手にとって、白刃のロビー……血を流して横たわるエルフの女の子の姿を見た。彼女が倒れているのはどこかの床が板張りの部屋、それしかわからない。
《助けるか、それとも見殺しにするかはお前次第だ》
写真の後ろに書いてある文字には、場所がどこかなんて書いてはいない。だから、モフモフうさぎは先に進むしかなかった。
目の前に古ぼけた門がある。右を見ても、左を見ても終わりの見えない延々と門壁が続いていて、遥か彼方のその先は白く光って、門も道もぼやけている。
今出てきた花の回廊からの出口、そこはこちらから見ると見事な緑の蔓が作ったアーチのゲートがあって、アーチを抜けた先には日の当たる場所に色とりどりの花が咲いているのが見えている。ゲートの入り口の両側からは、背の高い緑の生け垣が延々と続いている。
(先が見えねぇし。多分右も左も終わりがないって事だろうな。もしくはどっかで空間が繋がれて右に行ったいたつもりが、左からここに辿り着いてしまうみたいなループ……)
黒く塗られた鉄格子の門には閂が掛かり、モフモフうさぎの方からは開けることが出来ない。左右の大きな石柱にベルでもないかとモフモフうさぎがは調べてみたが、押しボタンやインターホンなどは付いていなかった。
(まぁ、当然だわな。むしろモニター付きのインターホンなんか付いてたら、世界観が変わってくるし)
黒い鉄格子の門の上部は、乗り越え防止の為に先端が鋭く尖った槍の様になっていた。
先に進むには門を開いて入ることが出来れば良いのだが、門の内側の様子がはっきりわからない、というのも黒い鉄格子の隙間からは、筋肉隆々の2体の石像が門の中の道の両側にそびえ立っているのが見えるだけだからだ。その先は苔むした石の階段が上に続いていて、モフモフうさぎの居る場所からは見えなかった。
「誰か居ませんかー、入ってもいいですかー?」
モフモフうさぎは大きな声を出してみた。
(返事が無いな……つーかあの石像って、どう見ても仁王像だよ、ここは和風テイストな世界なのかな?)
鉄格子の門にそっと触れてみて、痺れることが無いのを確認すると、モフモフうさぎは門を押したり引いたり、左右にスライドしないか試してみたりガシャガシャやってみた。
(あー無理、左右の門壁は垂直に4mはあってよじ登って越えるのはロープなどの道具がないと無理だ。じゃあどうする? ジャンプで飛び越えるにはこの鉄格子の門は高すぎる、1番高い所で4m以上ありそうだし先っちょが尖って危ないもんな)
「開けっゴマッ」
(ははっ、開くわけないか)
「お願い、開けて〜。そこのマッチョメン、ヘイッヘイッ、突っ立ってないで開けてくれよ〜、ウィッス」
「絶対あの石像怪しいよね。不法侵入したら動き出すよね、間違いないよね、フラグたってるもんね、おいおいおいおいおいっ、どうせ動くんだろっ? だったらもういいからさっさと動けよっ。動かなかったら後でペンキで塗ってやんぞ。おめぇはショッキングピンクだっ、そんでおめぇの方は……そうだな、ツルピカイエローだっ、オツムの所だけ金ピカにしといてやるよ。ありがたやありがたや……」
「つーかさ、趣味悪いよね。門はヨーロッパ風なのに中は日本の寺じゃねえか。和洋折衷してみましたって伝統の有り難みもわからない馬鹿が作ったつまんねぇ……」
ガチャンッ
門の前で適当にウロウロしながら大きな独り言を言っているモフモフうさぎが、いきなり響いた金属音にビックリした。




